2023年11月15日水曜日

 250-20231115

今回は「慶弔・見舞金」について解説します。

(解説)

1 この就業規則では、慶弔・見舞金の詳細は「慶弔・見舞金規定」に委ねています。

2 「慶弔・見舞金規定」では、支給する金額を空欄(□)にしています。各歯科医院の事情に応じて金額を決定してください。

[慶弔・見舞金規定(例)]

第1条(目的)

この規定は、就業規則第○条に基づき、従業員の慶弔金及び見舞金の支給について定めるものである。

第2条(適用範囲)

1.この規定は、就業規則第○条第○項に定める従業員(正社員)に適用する。

2.前項に拘わらず、就業規則第○条第○項に定める従業員については、本規定を準用して実施することがある。

第3条(給付金の種類と取扱)

1.慶弔見舞金の種類は、次のとおりとする。

①結婚祝金

②出産祝金

③慶弔金

④傷病見舞金

⑤災害見舞金

2.従業員またはその家族が、慶弔・見舞金を受けようとするときは、証明できる書類を提示して医院に届出なければならない。

3.従業員が、虚偽の申出により慶弔・見舞金を受領した場合には、その全額を直ちに返還しなければならない。

4.本規定に定める慶弔・見舞金は、労働者災害補償保険法その他社会保険関係法規による給付金に関係なく支給する。

第4条(結婚祝金)

1.就業規則第○条第○項に定める従業員(正社員)が在職中に結婚した場合、本人に対して□円の祝金を支給する。

2.結婚の当事者双方が就業規則第○条第○項に定める従業員(正社員)であるときは、それぞれに□円の祝金を支給する。

第5条(出産祝金)

1.就業規則第○条第○項に定める従業員(正社員)又はその配偶者が子を出産したときは、□円の出産祝金を支給する。

2.死産又は出産後10日以内にその子が死亡したときは、第6条2号イの慶弔金を支給するものとする。

第6条(慶弔金)

就業規則第○条第○項に定める従業員(正社員)またはその家族が死亡したときは、次の慶弔金を支給する。

   従業員(正社員)の死亡

ア 勤続年数1年未満・・・・・・・・・・・・・・□円

イ 勤続年数1年以上5年未満・・・・・・・・・・□円

ウ 勤続年数5年以上10年未満・・・・・・・・・□円

  家族の死亡

ア 配偶者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□円

イ 子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・□円

ウ 父母(同居の配偶者の父母を含む)・・・・・・・ □円

第7条(傷病見舞金)

就業規則第○条第○項に定める従業員(正社員)が、傷病により休業が連続1か月以上に及んだときは、□円の見舞金を支給する。

第8条(災害見舞金)

就業規則第○条第○項に定める従業員(正社員)が、天変地異その他避けることのできない災害により被災したときは、その状況に応じて見舞金を支給する。

 

この「歯科医院の就業規則解説講座」は今回で完了です。次回からは、必要な改訂を行ないます。

2023年11月8日水曜日

 

249-20231108

今回は、慶弔・見舞金に関する条文を作成します。

第〇条(慶弔・見舞金)

従業員とその家族の慶弔・災害等に対しては、「慶弔・見舞金規定」により祝金、慶弔金、及び見舞金を支給する。

次回は、「慶弔・見舞金」について解説をし、あわせて「慶弔・見舞金規定」を作ります。

2023年11月1日水曜日

 

248-20231101

今回も引続き「教育・研修」について解説します。

(解説)

5 4項と5項は、従業員の職業能力の自己啓発について定めています。歯科医院を取巻く環境は常に変化しています。そのため従業員の技術や接遇の質を高め、顧客満足を向上させることは、歯科医院の経営にとってきわめて重要な意味をもっています。

6 医院がそのために必要な全ての教育・研修を従業員に提供することは、多くの場合業務上の困難を伴います。たとえば、院内で技術や接遇の研修を計画する場合には、診療時間を削って行なう必要がありますが(私はそれを推奨・実施していますが)、多くの歯科医院にとってこれはかなり高いハードルになります。そのため従業員の自己啓発にある程度期待せざるを得ません。

7 医院は従業員が自己啓発するための環境を整備する必要があります。自己啓発に取組む従業員に対する費用の負担(援助)その他必要な事項を別途細則などで定めておきます。これによって従業員の自己啓発の内容を報告させ、これを人事評価の対象とすることが可能になります。

次回は「慶弔・見舞金」の条文を考えます。

2023年10月18日水曜日

 

247-20231018

今回も引続き「教育・研修」について解説します。

(解説)

3 1項と2項によって歯科衛生士等の教育・訓練義務が発生します。しかし、職務との関連性がないOff-JT(文化・一般教養に関するものや、職務とは無関係に人格の陶冶を目的とするものなど)は、当然には労働契約の内容には含まれないので、このような教育・研修を命じる場合は就業規則の規定が必要になります。したがって、1項の条文中に「(一般教養等に関する教育・研修を含む)」と明記しました。なお、歯科医院においては、顧客満足を高めるための「接遇」の教育・研修はとりわけ大切です。これは、歯科衛生士等の本来の職務と密接に関連しますから労働契約の内容に含まれると考えられます。

4 合宿研修で外泊・外出を禁じる場合は、教育・研修の目的を達するために必要最小限度の範囲にとどめるべきです。したがって、日数制限や時間制限を設けて教育・研修を命じる必要があります。

次回も引続き「教育・研修」について解説します。

2023年10月11日水曜日

 

246-20231011

今回は、「教育・研修」について解説します。

(解説)

1 能力開発としての教育・研修は、従業員の「業務遂行過程内における職業訓練」(OJT)と「業務遂行過程外における職業訓練」(Off-JT)に大別されます。

2 従業員は労働契約から生じる労働義務として当然にOJTに従事する義務を負い、歯科医院は就業規則の規定がなくてもOJTを命じることができます。これに対して、日常業務を離れて業務遂行過程外で実施されるOff-JTは、就業規則でOff-JTに関する事項が定められていれば、それは労働契約となって従業員の受講義務が発生すると考えられます。

次回も引続き「教育・研修」について解説します。

2023年10月4日水曜日

 

245-20231004

今回は、教育・研修に関する条文を作成します。

第〇条(教育・研修)

1 医院は、従業員に対して、業務に必要な知識を高め、技能を向上するため、日常の指示ないし命令として教育・研修(一般教養等に関する教育・研修を含む)を命じることがある。

2 従業員は、医院から教育・研修を受講するよう指示された場合は、特段の事由がない限り、指示された教育・研修を受けなければならない。教育・研修の種類、費用負担その他必要な事項については、別途細則で定める。

3 医院は従業員に対して、業務上の必要により合宿研修を命じ、かつその間合宿所からの外出及び外泊を禁じることがある。

4 従業員は、自ら進んで自己啓発に努め、職業能力の開発と向上に積極的に取組まなければならない。

5 医院は、従業員に対して、前項の取組みの内容を報告させ、これを医院の定める基準に基づいて人事評価の対象とすることができる。

次回は、「教育・研修」について解説をします。

2023年9月21日木曜日

 

244-20230921

ホームページをリニューアルしました!

これから開業される予定の歯科医院や労務管理を円滑に行なうために就業規則を整えたいと考えている歯科医院の方は、新しいホームページ「初めて歯科就業規則を作る方へ」をご覧ください。

私は社労士歴25年余り。このブログ「歯科医院の就業規則作成講座」は2016年からずっと書き続けています。加えて、最新の法改正を取入れた「歯科就業規則雛形」も完成しました。これらの経験をベースにして、歯科医院の就業規則三部作(就業規則本則・給与規定・パート就業規則)の提供を開始しましたので、新しいホームページでご案内しております。

費用は24回分割で月額25,000円。歯科医院の就業規則三部作を採用していただいた歯科医院に対しては、人事・労務管理を行なう上で発生する諸問題について、24か月間継続して疑問・相談に回答し、適切なアドバイスを行ないます。追加の費用はかかりません。

詳しくは、新しいホームページをご覧ください。

ブログ作成者・社会保険労務士 塩賀光明

2023年9月20日水曜日

 

243-20230920

今回も引続き「災害補償」について解説します。

(解説)

6 第2項は、療養補償を受ける従業員が療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合は、使用者は平均賃金の1200日分の打切補償を行ない、その後は補償を行なわなくてもよいと規定しています。これは、労働基準法81条に基づいた規定です。

7 第3項は打切補償を行なったものとみなされる場合を定めています。従業員が、負傷又は疾病にかかる療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金(業務上の負傷又は疾病が療養開始後16か月を経過しても治っていない場合であって、16か月経過した日において障害の程度が1級から3級の程度<全部労働不能>である場合に支給される)を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けるようになった場合、打切補償を支払ったものとみなされます。これは、労災保険法19条に基づいた規定です。

次回は「教育研修」に関する条文を考えます。

2023年9月13日水曜日

 

242-20230913

ホームページをリニューアルしました!

社労士歴20余年、労使トラブルのない安定した職場作りを目指して職務を行なってきました。その経験に基づいて、2016年よりこのブログ「歯科医院の就業規則作成講座」を公開し、あわせて「歯科就業規則ひな型」を作成しました。

このたび、これらをベースにして、歯科医院の就業規則三部作(就業規則本則・給与規定・パート就業規則)として提供することになりましたので、新しいホームページ(「初めて歯科就業規則を作る方へ」)でご案内しております。

歯科医院の就業規則三部作を採用していただいた歯科医院に対しては、人事・労務管理を行なう上で発生する諸問題について、24か月間継続して疑問・相談に回答し、適切なアドバイスを行ないます。

詳しくは、新しいホームページをご覧ください。

 

ブログ作成者・社会保険労務士 塩賀光明

 

241-20230913

今回も引続き「災害補償」について解説します。

(解説)

3 「業務災害」と「通勤災害」は、保険給付の内容は全く同じですが、保険事故の性質が異なるため「通勤災害」の保険給付からは「補償」の語がとられています。たとえば、業務災害では「療養補償給付」ですが、通勤災害では「療養給付」となります。

4 実務上最も多い給付請求は、「療養補償給付」と「休業補償給付」です。療養補償給付の内容は、診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術、居宅における看護、病院への入院・看護、移送などです。休業補償給付は、療養のための休業の4日目から支給され、1日につき給付基礎日額(平均賃金相当額)の60%及び「社会復帰促進事業」として1日につき給付基礎日額の20%が支給されます。したがって、あわせて80%相当額が給付されることになります。

5 休業補償給付は、療養のための休業の4日目から支給されますから、この就業規則第1項に規定するように、「休業開始から3日間については労働基準法76条による休業補償を行なう」必要があります。この休業補償は、平均賃金の60%です。

次回も引続き「災害補償」について解説します。

2023年8月30日水曜日

 

240-20230830

今回は、「災害補償」について解説します。

(解説)

1 国は、「業務災害」や「通勤災害」によって被災した従業員の保護と救済を徹底するため、国が運営する「労働者災害補償保険法による保険制度」に使用者を強制加入させ、使用者から保険料を徴収して、被災した従業員に労災給付を行なうものとしています。

2 給付内容は、①療養(補償)給付、②休業(補償)給付、③障害(補償)給付、④遺族(補償)給付、⑤葬祭料、⑥傷病(補償)年金、⑦介護(補償)給付です。

次回も引続き「災害補償」について解説します。

2023年8月9日水曜日

 

239-20230809

今回は、災害補償に関する条文を作成します。

第〇条(災害補償)

1 従業員が業務上の事由又は通勤により、負傷し、疾病にかかり、又は死亡したときは、労働者災害補償保険法に定めるところにより災害補償を行なう。但し、業務上の負傷又は疾病により休業する場合、休業開始から3日間については労働基準法76条による休業補償を行なう。

2 前項の規定により補償を受ける者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合には、平均賃金の1200日分の打切補償を行なうことがある。この場合には以後の補償を行なわない。

3 療養開始後3年を経過した際に、労働者災害補償保険法による傷病補償年金を受けるに至った場合には、平均賃金の1200日分の打切補償を支給したものとみなす。

次回は、「災害補償」について解説をします。

2023年8月2日水曜日

 

238-20230802

今回も引続き「病者に対する就業禁止」について解説します。

(解説)

3 第3項は、就業禁止期間中の賃金は原則として支払われないことを定めています。但し、具体的な事情によっては、院長の判断で支払を行なうことができるようにしました。たとえば、労務を提供できなくなった原因が、必ずしも従業員の責めに帰するとは考えられないような事情がある場合がこれに該当するでしょう。

4 第4項は、就業禁止中の従業員が再勤務を申出た場合について規定しています。この場合、従業員に医師の診断書を提出させて、その診断結果によって再勤務が可能かどうか判断することになります。

5 第5項と6項は、従業員が伝染性の疾病に感染した場合又はその疑いがある場合について、医院に報告・届出する義務がある旨を規定しています。とくに、歯科医院は患者さんの健康に影響する業務を行なっていますから、患者さん及び他の従業員への感染拡大を防止するために、早期に当該従業員の就労を禁止する措置をとる必要があります。

次回は「災害補償」の条文を考えます。

2023年7月27日木曜日

 

237-20230727

今回は、「病者に対する就業禁止」について解説します。

(解説)

1 労働安全衛生法や感染症法等の法令によって、従業員の就業禁止や就業制限が定められています。第1項は、この法令上の就業禁止や就業制限を就業規則に規定することによって、労働契約の内容として明確にしたものです。

2 第2項は、法令上の就業禁止や就業制限に該当しない場合であっても、院長が従業員の心身の状況が業務に適しないと判断した場合は就業を禁止することができる旨を定めたものです。従業員は、雇用契約によって労務提供義務を負っていますが、この義務は心身共に健康な状態でなされるべきものです。とくに、歯科医院は患者さんの健康に影響する業務を行なっていますから、院長は法令上の就業禁止や就業制限に該当しない場合であっても、心身の状況が業務に適しない従業員の労務提供を拒否することができるとしたものです。

次回も引続き「病者に対する就業禁止」について解説します。

2023年7月19日水曜日

 

236-20230719

今回は、病者に対する就業禁止に関する条文を作成します。

第〇条(病者に対する就業禁止)

1. 医院は、従業員が次の各号のいずれかに該当したときは、就業を禁止する。

①伝染性の疾病(新型インフルエンザ、新型コロナ及びそれらの疑いを含む。以下同じ。)にかかった者

②心臓、腎臓、肺等の疾病であって、就業により病勢が増すおそれがあると判断される者

③前各号に準じる疾病により就業が不適当と認められる者

2. 前項の規定にかかわらず、医院は、従業員の心身の状況が業務に適しないと判断した場その就業を禁止することがある。

3.前2項により就業を禁止された期間は無給とする。但し、医院が必要と認めたときはこの限りではない。

4.就業禁止中の従業員が再勤務を申出たときは、医師の診断を求めたうえで再勤務の当否を決定する。

5.従業員は、伝染性の疾病に感染した場合又はその疑いがある場合、直ちに医院に報告しなければならない。

6.従業員は、同居の家族又は同居人が伝染性の疾病にかかり若しくはその疑いのある場合又は住居付近において伝染性の疾病が発生した場合、直ちに医院に届け出て必要な指示を受けなければならない。

次回は、「病者に対する就業禁止」について解説をします。

2023年7月12日水曜日

 

 

235-20230712

今回も、「健康診断」について解説します。

(解説)

6 第5項は、定期健康診断及び再検査以外の健康診断(結果報告を含む)について規定しています。このような法定外の健康診断については、従業員の受診義務が問題になることがあります。判例は、就業規則等の規定に基づいて、使用者指定病院の精密検査を命じられた従業員がこれを拒否した事案について、精密検査が従業員の病気治癒という目的に照らして合理的で相当な内容のものであれば、受診の自由や医師選択の自由を理由に受診を拒否することは許されないと判示しています(最高裁 昭和61年)。

次回は、「病者に対する就業禁止等」に関する条文を考えます。

2023年7月5日水曜日

 

234-20230705

今回も、「健康診断」について解説します。

(解説)

5 第4項は、定期健康診断の結果に異常の所見(たとえば、再検査や精密検査を要する旨の所見)がみられた従業員が、再検査を受診せず又は受診してもその結果を報告しない場合は、医院は当該従業員の就業を拒否できるとしています。従業員は、労働契約に基づき健康な状態で就業する義務があります。特に、歯科医院の場合は患者さんに対する影響を避けなければなりませんから、当該従業員の就業を拒否できることには合理的な理由があるといえます。

次回も「健康診断」の解説をします。

2023年6月28日水曜日

 

233-20230628

今回も、「健康診断」について解説します。

(解説)

3 第3項は、定期健康診断の結果に異常の所見(たとえば、再検査や精密検査を要する旨の所見)がみられた場合について、医院が再検査を命じることを前提に、従業員に対して医院が指定する医師による再検査の受診義務を定めたものです。従業員に異常の所見がみられたことを知りながら通常通りの業務を行なわせ、その結果従業員がたとえば死亡し又は労務不能になった場合には、医院は「安全配慮義務」違反を理由に損害賠償請求されることにもなりかねないので、注意が必要です。

4 安全配慮義務とは、“信義則に基づき、労務提供に伴う従業員の生命・身体への危険を未然に防止する義務”です。労働契約における安全配慮義務は、使用者(歯科医院)に対して広範でかつ積極的な作為義務(健康管理・安全教育・施設の整備点検・業務軽減など)を義務づけるものになっています。

次回も引続き「健康診断」について解説します。

2023年6月14日水曜日

 

232-20230614

今回は、「健康診断」について解説します。

(解説)

1 歯科医院(事業者)は、従業員に対して1年に1回、定期健康診断を行なわなければなりません(労働安全衛生法66条1項)。他方、従業員も、歯科医院が行なう健康診断を受診しなければなりません(同法66条5項本文)。そこで、この就業規則の第1項は、従業員に定期健康診断を義務づけています。なお、従業員は、歯科医院が指定した医師とは別の医師による健康診断を受ける「医師選択の自由」があります(同法66条5項但書)。これは、歯科医院が指定する医師が、たとえば院長の意を受けた診断結果を作成するおそれがあるとも限らないので、従業員に自分の信頼する医師による診断を受ける途を与えたものです。

2 第2項は、正当な理由なく定期健康診断を受診しない従業員に対して懲戒処分を行なうことがあると定めています。定期健康診断は歯科医院に法的に義務づけられているものですし、従業員の健康状態を正確に把握することは労務管理上きわめて重要であるからです。

次回も引続き「健康診断」について解説します。

2023年6月7日水曜日

 

231-20230607

今回は、健康診断に関する条文を作成します。

第〇条(健康診断)

1. 従業員は、毎年1回、医院の指定する医師による定期健康診断を受けなければならない。

2. 従業員が、正当な理由なく前項の定期健康診断を受診しない場合、第○条の規定により懲戒処分とすることがある。

3.従業員は、第1項に規定する定期健康診断の結果に異常の所見がある場合には、医院の指定する医師による再検査を受診し、その結果を医院に報告しなければならない。

4.従業員が、正当な理由なく前項の再検査を受診しない場合、又はその結果を報告しない場合には、医院は当該従業員の就業を拒否する場合がある。

5.医院は、第1項の健康診断及び第3項の再検査以外にも、随時従業員に対し健康診断の受診及びその結果の報告を命じることがある。この場合には、前項の規定を準用する。

6.第1項、第3項及び前項に定める健康診断に要する時間については、無給とする。

次回は、「健康診断」について解説をします。

2023年5月17日水曜日

 

230-20230517

今回も引続き「安全衛生の義務」について解説します。

(解説)

4 歯科医院では、患者さんの治療に用いた器具で誤って身体を刺して負傷したケース(業務上の事故による負傷)や業務遂行中の腰部への突発的な出来事によって生じた腰痛(業務上の疾病)などが散見されます。仕事のストレスと従業員自身の精神的脆弱性が相まって発症する「うつ病」などの精神障害にも注意が必要です。

医院は、安全・衛生に関する諸規則を作成し、従業員に対して教育を実施し、必要な諸々の措置・手段を講じるなど、職場における従業員の安全と健康を確保するために十分な配慮をする義務があります(労働契約法5条)。

5 医院が安全配慮義務を怠って従業員が被災した場合には、不法行為(民法709715条)や債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償責任を追及されることにもなりますので注意が必要です。

次回は「健康診断」に関する条文を考えます。

2023年5月10日水曜日

 

229-20230510

今回は、「安全衛生の義務」について解説します。

(解説)

1 本条第1項は医院が定める安全・衛生に関する諸規則を遵守して労働災害防止に努めることを従業員に義務づけ、第2項では従業員として特に遵守すべき安全・衛生上の事項を定めています。そして、第3項では実際に業務災害が発生した場合の対処方針を規定しています。

2 労働安全衛生法は、職場における従業員の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています(労働安全衛生法1条)。この法律は、歯科医院の安全配慮義務(労働契約法5条<使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする>)の内容になりますから、歯科医院は労働安全衛生法を遵守する必要があります。

3 他方、歯科医院が労働安全衛生法遵守するにあたっては従業員の協力が不可欠です。ですから、従業員は、医院が実施する労働災害の防止に協力するよう努めなければなりません(労働安全衛生法4条)。

次回も引続き「安全衛生の義務」について解説します。

2023年4月26日水曜日

 

228-20230426

今回は、安全衛生の義務に関する条文を作成します。

第〇条(安全衛生の義務)

1. 従業員は、法令及び医院が定める安全・衛生の諸規則を守り、医院の指示に従い、労働災害の防止に努めなければならない。

2. 従業員は、次の事項を遵守しなければならない。

① 安全衛生に関する規則及び安全管理者等の命令・指示に従うこと。 

② 職場の整理整頓に努め、災害を未然に防止すること。

③ 消火設備その他危険防止のために設けられた設備を許可なく除去、変更するなど、その効力を失わせるような行為をしないこと。

④ 療養及び病後の就業については、医院の指示に従うこと。

3.業務上の災害が発生したときは、あらかじめ医院が定めた方法によって対処しなければならない。

次回は、「安全衛生の義務」について解説をします。

2023年4月19日水曜日

 

227-20230419

今回も従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。

(解説)

5 医院が従業員に支払うべき賃金から損害賠償額(損害金)を天引き(相殺)できるかという問題があります。労働基準法は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(労働基準法24条1項)と定めていますから、賃金と損害賠償額(損害金)を相殺することは、この賃金の全額払の原則に違反して許されません(関西精機事件:最高裁昭和31年判決)。それでは、従業員の自由な意思に基づいて、医院と従業員との合意によって相殺を行なうことはどうでしょうか?私は、損害賠償責任の有無やその程度、合意に至った経緯、従業員の退職引留め手段となっているか否か等によっては、相殺の効力が否定される場合があると考えています。相殺を安易に行なうと労使の紛争になりやすいので、社会保険労務士等に相談されることをお薦めします。

次回は「安全衛生の義務」に関する条文を考えます。

2023年4月12日水曜日

 226-20230412

今回も従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。

(解説)

4 従業員の業務遂行上の過失(不注意・ミス)によって医院に損害が発生した場合は、損害の公平な負担や信義則の観点から、従業員の責任が制限されます。裁判例では、従業員に過失があっても故意や重大な過失が認められない場合には、損害賠償請求(第224回2の①参照)や求償請求(同2の②参照)が認められないケースがあります。たとえば「エーディーディー事件(京都地裁判決 平成23年)」は、「被用者においてそれについて故意又は重過失があったとは証拠上認められないこと、使用者が損害であると主張する売上減少、ノルマ未達などは、ある程度予想できるところであり、報償責任・危険責任の観点から本来的に使用者が負担すべきリスクであると考えられること、使用者の主張する損害額は2,000万円を超えるものであり、被用者の受領してきた賃金額に比しあまりにも高額であり」、そのような「ことなどからすると、使用者が主張するような損害は、結局は取引関係にある企業同士で通常に有り得るトラブルなのであって、それを労働者個人に負担させることは相当ではなく、使用者の損害賠償請求は認められないというべきである。」と判示しています。

次回も引続き「損害賠償」について考えます。

2023年4月5日水曜日

 225-20230405

今回も従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。

(解説)

3 従業員が故意に不法行為(窃盗、横領、背任、暴行など)を行い又は債務不履行(業務の懈怠、雇用契約に伴う付随的義務違反<守秘義務違反、競業避止義務違反>など)に及んだ場合は、医院に生じた損害の全額を賠償請求できることに異論はありません。しかし、従業員が業務を遂行する過程で、過失(不注意・ミス)によって医院に損害を与えた場合に、当該従業員に全額の賠償を求めることには大いに疑問があります。なぜなら、業務遂行上の不注意やミスから生じる損害は、従業員を指揮命令し、従業員を使用することから利益を得ている使用者(医院)が危険を負担すべきであると考えられるからです(これを「危険責任・報償責任の法理」といいます)。

次回も引続き「損害賠償」について考えます。

2023年3月29日水曜日

 224-20230329

今回は、従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。

(解説)

1 労働基準法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない」と規定しています。ですから、たとえば歯科衛生士が医院の器物を損傷した場合に備えて、その相当額の支払を義務づける契約をすることは禁止されます。

2 しかし、同条は、損害が現実に発生した場合に、医院が従業員に損害賠償を請求することを禁止する趣旨ではありません。医院が従業員に損害賠償を請求するケースには次のような場合が考えられます。①従業員の行為によって損害を受けた医院が、直接当該従業員に損害賠償を請求する場合(民法415条<債務不履行による損害賠償請求>・709条<不法行為による損害賠償請求>。)、②従業員の行為によって損害を受けた第三者(たとえば患者さん)に対して医院が損害を賠償した後(民法715条<使用者責任による損害賠償>)、当該従業員に対して求償する場合(民法7153項<求償権の行使>)。

次回も引続き「損害賠償」について考えます。

2023年3月22日水曜日

 223-20230322

今回は、損害賠償に関する条文を作成します。

第〇条(損害賠償)

従業員が故意若しくは過失又は不作為によって医院に損害を与えたときは、懲戒されたことによって損害の賠償を免れることはできない。

次回は、「損害賠償」について解説をします。

2023年3月16日木曜日

 

222-20230316

今回は「懲戒の加重」について解説します。

(解説)

5 二重処罰禁止の原則とは、最初の軽い懲戒処分の対象となった非違行為を、後の重い懲戒処分の対象にはできないという原則です。しかし、二重処罰禁止の原則に抵触するかどうかの判断はかなり難しいといえます。

6 そこで歯科医院の実務上は、最初の非違行為に対しては、懲戒処分ではない「警告書」による警告や「注意書」による注意を行なうことをお薦めしています。そのような方法をとれば、その対象となった非違行為が再度行なわれた場合に重い懲戒処分に処したとしても、二重処罰にはあたらないと考えられます。実務上は判断が難しい場合が多いですから、社会保険労務士に相談することをお薦めします。

次回は「損害賠償」について考えます。

2023年3月8日水曜日

221-20230308

今回も引続き「懲戒の加重」について解説します。

(解説)

3 この就業規則では、懲戒を加重することができる5つの具体的な要件を規定しています。このうち「④過去に類似の非違行為を行なって懲戒処分を受けたことがあるとき」については少し注意することがあります。

4 初回の非違行為に対していきなり懲戒解雇や諭旨解雇のような重い処分を科すのではなく、まずは「けん責」や「出勤停止」などの軽い処分を行ない、その後同じような非違行為を行なった場合に重い処分を科す場合には二重処罰の禁止に抵触することになるので注意が必要です。

次回も「懲戒の加重」について解説します。

2023年3月1日水曜日

 220-20230301

今回は「懲戒の加重」について解説します。

(解説)

1 懲戒を加重する(重いレベルの懲戒処分を選択する)場合は、処分の相当性を慎重に検討する必要があります。218回で解説したように、どのような懲戒処分を選択するかは懲戒権者である使用者(院長)の裁量に属しますが、その処分は従業員の行為と処分とのバランス(相当性)が要求されます。

2 使用者(院長)がこの裁量判断を誤り、不当に重い処分を選択すれば、使用者の懲戒権の行使は、たとえ就業規則に定める懲戒事由に該当する事実がある場合でも、その処分が客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認できないときは、権利の濫用として無効になります(労働契約法15条)。

次回も引続き「懲戒の加重」について考えます。

2023年2月22日水曜日

 219-20230222

今回は、懲戒の加重に関する条文を作成します。

第〇条(懲戒の加重)

次の各号の事由に該当する場合には、その懲戒を加重する。

   非違行為の動機もしくは態様がきわめて悪質であるとき又は非違行為の結果がきわめて重大であるとき。

   非違行為を行なった従業員が管理又は監督等の役職者であるとき。

   非違行為の医院に及ぼす影響が特に大きいとき。

   過去に類似の非違行為を行なって懲戒処分を受けたことがあるとき。

   同時に2以上の懲戒該当行為を行なっていたとき。

次回は、「懲戒の加重」について解説をします。

2023年2月15日水曜日

 218-20230215

今回は「懲戒の軽減」について解説します。

(解説)

1 どのような懲戒処分を選択するかは懲戒権者である使用者(院長)の裁量に属しますが、その処分は従業員の行為と処分とのバランスが要求されます。使用者(院長)がこの裁量判断を誤り、不当に重い処分を選択すれば、使用者の懲戒権の行使は、たとえ就業規則に定める懲戒事由に該当する事実がある場合でも、具体的事情(従業員の行為の態様・動機、業務に及ぼした影響、損害の程度、従業員の態度・情状・処分歴など)のもとで、その処分が客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認できないときは、権利の濫用として無効になります。

2 この就業規則では、上記の具体的な事情として特に「情状酌量の余地」がある場合、非違行為が発覚する前に申告するなど「改悛の情」が認められる場合は、懲戒を軽減し又は免除することができることとしました。

次回は「懲戒の加重」について考えます。

2023年2月8日水曜日

 217-20230208

今回は、懲戒の軽減に関する条文を作成します。

第〇条(懲戒の軽減)

情状酌量の余地があり又は非違行為が発覚する前に、医院に対して自主的に申告する等改悛の情が明らかに認められる場合は、懲戒を軽減し又は免除することがある。

次回は、「懲戒の軽減」について解説をします。

2023年1月25日水曜日

 216-20230125

今回も「弁明の機会」について解説します。

(解説)

3 就業規則に口頭又は文書による弁明の機会を付与することが定められているにもかかわらず、これを行なわずに懲戒解雇したのは重大な手続違反であり当該懲戒解雇は無効と判示した裁判例(千代田学園事件:東京高裁判決平成16年)があります。

4 就業規則がない歯科医院や就業規則があっても弁明の機会の付与についての規定がない歯科医院の場合はどうなるのでしょうか?「懲戒解雇」は、懲戒(制裁)として行なわれる解雇であり、懲戒の中で最も重い処分です。懲戒解雇された従業員は、働く職場と退職金請求権を失うだけでなく、不名誉な処分を受けたために再就職が困難になるという重大な不利益を被ります。「諭旨解雇」は、本人に反省が認められるなどの情状等を斟酌して、懲戒解雇を若干緩和した処分ですが、従業員を失職させる点で不利益を与えることに変わりはありません。したがって、懲戒解雇や諭旨解雇のような重い処分を行なう場合は、たとえ就業規則に弁明の機会の付与についての規定がない場合であっても、弁明の機会を付与することが必要だと考えます。同旨の裁判例があります(ビーアンドヴイ事件:東京地裁判決平成22年)。

次回は「懲戒の減軽」に関する条文を考えます。

2023年1月11日水曜日

 

215-20230111

今回は「弁明の機会」について解説します。

(解説)

1 懲戒処分が有効と認められるためには、次の4つの要件が必要です。すなわち、①使用者が懲戒権を有すること、②従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当すること(懲戒事由該当性)、③行なった懲戒が懲戒処分の濫用と評価されないこと、④弁明の機会を与えるなど就業規則で定められた手続違反がないこと等です。

2 すべての懲戒処分について④の弁明の機会を付与することを義務づけると、懲戒手続が煩雑になるので、この就業規則では、諭旨解雇又は懲戒解雇に処する場合に限って弁明の機会を付与することにしました。就業規則で従業員に弁明の機会が与えられているにもかかわらず、その手続を経過せずに懲戒処分を行なった場合は、重大な手続違反とされ、懲戒権の濫用と評価されます。

次回も「弁明の機会」について解説します。