2016年12月28日水曜日


28-20161228



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。



(解説)

6 職場復帰するには、休職の原因となった傷病が従来の業務を健康時と同様に遂行できる程度に「治癒」していなければなりません。しかし、現実には「治癒」に至らずに職場復帰したため、業務の軽減等の措置が必要になる場合があります。本条4項はこれに備えて、降格や給与減額があり得ることを規定したものです。



7 休職期間が満了しても職場復帰ができない場合に、使用者(院長)の一方的な意思表示によって「解雇」するのか、労使の特別な意思表示を要しない「自然退職」になるのかが問題になります。本条5項は、「自然退職」になることを明らかにしたものです。「解雇」にした場合には、労働基準法20条により、30日以上前の予告が必要になりますし、予告がない場合には、予告手当を支払わなければなりません。加えて、解雇にした場合は、労働契約法16条の解雇の要件(解雇するには、「客観的に合理的な理由」と「社会的相当性」が必要)が争われることにもなりかねないので、「自然退職」としておくのが適切です。



次回は、歯科医院の従業員の「復職の取消」に関する条文を作成します。

2016年12月13日火曜日


27-20161213



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。



(解説)

4 本条2項で、復職するには「治癒」していることが必要であり、これを証明するために従業員のほうから治癒証明(診断書)を提出すべきことを規定しました。しかし、医師は当該休職している従業員(たとえば、歯科衛生士等)の具体的な業務内容やその患者さんに対する接遇の重要性等を把握・理解していないので、客観的には就労に耐えない状態であるにもかかわらず、診断書には「就労可能」と記載されていたり、「当分の間は軽度の作業に限る」などの条件をつける場合があります。また、医師の診断書は、当該休職している従業員本人や家族の意向を反映している場合が多く、必ずしも客観的に「就労可能」ではない場合があります。



5 医師の診断書が上記のようなものだとすると、院長としては診断書に記載された内容についてその真意を確認するために、当該診断書を作成した医師と面談をする必要に迫られます。しかし、医師の守秘義務や個人情報保護の理由によって、医師から面談を拒否される場合が多いのが現状です。このため、本条3項で、本来「治癒」したことの証明責任を負っている当該休職している従業員に対して、医師との面談に協力すべきことを義務付けることとしました。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。

2016年12月6日火曜日


26-20161206



今回は、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。



(解説)

1 どのような理由で休職したかによって、復職の手続は異なります。休職の理由が私傷病以外の理由であるときは、医院に復職願を提出するだけで十分です。



2 私傷病休職の場合は、どのような場合に復職が可能か、その復職基準を明確にしておくことがとても重要です。特に近年増加しているうつ病等の精神疾患は、完治することが容易ではないと言われていますので、就業規則で明確に復職基準を定め、復職が可能か否かについて厳格に判断してゆくことが、結果としてトラブルを回避することにつながります。本条2項は、私傷病における復職基準と復職手続を定め、歯科医院の従業員が仕事に復帰するためには、休職の原因となった死傷病が「治癒」していなければならないと規定しています。



3 治癒した状態とは、「出勤可能」「平易な作業であれば就労可能」「短時間であれば就労可能」というような状態では足りません。民法493条に定める債務の本旨に従った弁済(本旨弁済)とは、医院と従業員が合意した労働契約の内容にしたがって、従前の業務を健康なときと同様に遂行できるということです。したがって、その程度に回復していなければ、就労を拒否されてもやむを得ないということになります。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。

2016年11月28日月曜日


25-20161128



今回は、歯科医院の従業員の「復職」についての条文を作成します。



第〇条(復職)

1 休職期間中に休職事由が消滅したときは、すみやかにその旨を医院に通知し、復職願を提出しなければならない。

2 休職の事由が傷病等による場合は、休職期間満了時までに治癒し(民法493条に定める本旨弁済すなわち従来の業務を健康なときと同様に遂行できる程度に回復することをいう。以下同じ)、又は復職後ほどなく治癒することが見込まれると医院が認めた場合に限り復職させることとする。この場合、医院の指定する医師の治癒証明(診断書)を提出しなければならない。

3 前項による診断書の提出に際して、医院が診断書を作成した医師に対する文書または面談による事情聴取を求めた場合、従業員はその実現に協力しなければならない。

4 復職後の職務内容、労働条件、その他待遇等に関しては、状況に応じて業務の軽減等の措置をとる場合には、降格・給与の減額等の調整を行うことがある。

5 休職期間が満了してもなお就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。



次回は、「復職」についての条文の解説をします。

2016年11月22日火曜日


24-20161122



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。



(解説)

6 業務外の傷病によって休職している期間は、給与を支給せず、勤続年数に算入しないことを明らかにしておくことが必要です。



7 従業員は、休職期間中であっても社会保険の保険料や住民税を負担しなければなりません。その支払方法をあらかじめ取り決めておく必要があります。医院から休職中の従業員に対して、メールでそれらの金額を通知し、医院の銀行口座に振込んでもらう方法が最も便利です。



8 業務外の傷病による休職は、労務の提供を免除又は拒否し、休職期間中に傷病を治癒して職場に復帰することによって、再び労務の提供を可能にするための期間ですから、休職した従業員は、当然療養に専念する義務があります。このため、毎月、治療の状況や休職の必要性等を医師に証明してもらうようにしましょう。診断書の作成費用は、従業員が負担するようにします。



次回は、休職している従業員の「復職」に関する条文の解説をします。

2016年11月15日火曜日


23-20161115



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。



(解説)

4 業務外の傷病が、休職期間中に治癒する可能性が低い場合(たとえば、交通事故による脳損傷で意識不明の状態が続いているような場合)には、休職を認めずに解雇できるかの問題があります。これについて、私は、次のような理由で、原則として休職の措置をとるべきであろうと思います。①休職期間中に治癒するかどうかの判断が困難な場合が多いこと、②解雇は、客観的に合理的な理由と社会的相当性を要求されることから、それらの要件をめぐってあとでトラブルになりやすいこと、③いきなり解雇すると、他の従業員に不安や動揺を生じさせるおそれがあること(歯科医院の多くは少人数で従業員同士の結びつきが強いので、この傾向が強くなります)

、④休職を認めた場合、従業員にとっては、社会保険料の折半負担や傷病手当金の給付を受けられるなどのメリットがあること。したがって、実務上は、業務外の傷病を解雇事由ではなくて休職事由と考えて、治癒の蓋然性を判断することなく、休職を命じるほうが無難だといえます。



5 従業員が傷病手当金を受給するためには、歯科医院が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の制度に加入し、当該休職する従業員がその被保険者資格を有していることが必要です。法人の歯科医院及び常時5人以上の従業員を使用する個人経営の歯科医院は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業所です。従業員が常時5人未満の個人経営の歯科医院は強制適用事業所ではありませんが、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意し、厚生労働大臣の許可を受けることにより適用事業所となることができます。傷病手当金は、人材を定着させる有効な方法のひとつですから、小規模の歯科医院も社会保険に加入したいものです。妊娠に伴う“つわり”に対しても傷病手当金を申請することができますから、女性の職場である歯科医院にとっては、まさになくてはならない制度であるといえるでしょう。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。

2016年11月2日水曜日


22-20161102



今回は、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。



(解説)

1 「休職」は、従業員が労務不能(長期欠勤又は仕事が不完全ないし不適切な状態)に陥った場合に、労働契約は維持しつつ労務の提供を免除する制度です。



2 業務外の傷病による欠勤がどの程度続いたときに休職を命じるべきかについては、歯科医院の業務の特殊性を考慮する必要があります。歯科医院の業務は、予約制度を前提としたチーム医療で運営されていますから、従業員の欠勤が続けば業務に深刻な影響が出ます。このような歯科医院の業務の特殊性を考慮して、休職を命じる時期は、従業員の欠勤が「継続、断続を問わず日常業務に支障をきたす程度(おおむね1か月程度)続くと認められるとき」とするのが適切でしょう。



3 欠勤するわけではないが、仕事が不完全な場合も休職を命じることができます。特に最近では、うつ病等の精神疾患が増える傾向にありますから、その対策も考えておく必要があります。従業員の中でも歯科衛生士は、患者さんの健康に重大な影響を与える業務を行いますから、その業務が不完全ないし不適切な場合は、患者さんの顧客満足を損ない、場合によってはクレームの原因ともなり、医院の経営に重大な影響を与えます。したがって、歯科医院では、従業員の仕事が不完全ないし不適切な場合は、欠勤の有無を問わず、早期に休職を命じる必要があるでしょう。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。

2016年10月26日水曜日


21-20161026



今回は、歯科医院の従業員の「休職」についての条文を作成します。



第〇条(休職)

1 正社員が次の各号のいずれかに該当するときは、所定の期間休職を命じることがある。


①業務外の傷病による欠勤が、継続、断続を問わず日常業務に支障をきたす程度(おおむね1か月程度)続くと認められるとき、若しくは休養が望ましい旨の医師の意見により療養を継続する必要があるため引続き欠勤するとき

欠勤初日から1年以内


②精神又は身体上の疾患により労務提供が不完全なとき、若しくは休養が望ましい旨の医師の意見により療養する必要があるため欠勤するとき

休職の辞令公布日から1年以内


③前2号のほか、特別な事情により休職させることが適当と認められるとき

医院が必要と認める期間



2 医院は、前項1号及び2号により休職中の従業員のために、社会保険(健康保険)の傷病手当金の申請を行う。



3 休職期間中の健康保険料、厚生年金保険料、住民税等であって、従業員の給与から通常控除するものについては、医院は従業員に対しあらかじめ請求書等を送付する。従業員は当該請求書等に記載された金額を指定期日までに医院に支払わなければならない。



4 休職期間は、勤続年数に算入しない。



5 休職期間中の給与は支給しない。



6 休職する従業員は、休職期間中主治医の診断に従い療養に専念するとともに、原則として毎月、療養の状況、休職の必要性等についてこれを証する診断書等を添えて医院に報告しなければならない。



7 前項及び次条第1項の診断書作成費用等は、医院による別段の指示がない限り、従業員本人の負担とする。


次回は、歯科医院の従業員の「休職」についての条文の解説をします。

2016年10月19日水曜日


20-20161019



今回は、歯科医院の従業員の「試用期間」に関する条文の解説をします。



(解説)

1 試用期間とは、正社員を採用するにあたって、採用後一定期間を「試用」の期間として、その間に当該正社員の人物や職務能力(例えば技術や接遇の能力)を評価して、本採用するかどうかを決定する制度です。裁判所は試用期間の法的性質について「解約権留保付労働契約」と解しています。したがって、試用期間中ないしは試用期間満了時の解雇や本採用拒否は、留保解約権の行使となり、この行使は「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合のみ許される」としています(三菱樹脂事件<最高裁大法廷判決昭和48.12.12>)。そのうえで、このような留保解約権に基づく解雇は通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められるべきであると判示しているので(上記最高裁判決)、歯科医院における試用期間中の従業員の本採用拒否は通常の解雇の場合よりも院長の有する労働契約解消の裁量範囲が広いものと考えてよいでしょう。



2 上述のように試用期間中の従業員の本採用拒否は、通常の解雇の場合よりも院長のもつ労働契約解消の裁量範囲が広いものと考えられるので、従業員にとっては不安定な地位におかれることになります。したがって、合理的な理由や必要性もなく長期にわたる試用期間を設けることは公序良俗違反として無効となり得ます(民法90条)。歯科医院の場合には、人物や職務能力(例えば技術や接遇の能力)を評価するために3か月程度が適当であると考えられますから、第1項で最長4か月間としました。



3 本条2項は、試用期間が本採用を決定するための期間であることと、その決定は「試用期間の途中又は満了日に行う」として、試用期間満了前の決定が可能であることを明確にしています。



4 試用期間を延長するためには、就業規則で延長事由等を規定し、かつ延長するための合理的な理由が必要とされています。合理的な理由がなければ、最初の試用期間満了と同時に本採用されたものとされるでしょう。延長期間も、実務上は、試用期間と延長期間を合算して1年を超えることは許されないと考えておいた方がいいでしょう(3項)。



5 本条4項は、試用期間を勤続年数に含めることを明確にしたものです。



次回は、歯科医院の従業員の「休職」についての条文を考えましょう。

2016年10月12日水曜日


19-20161003

今回は、歯科医院の従業員の「試用期間」についての条文を作成します。
 

第〇条(試用期間)

1 新たに採用した者については、採用の日から最長4ヶ月間を試用期間とする。

2 試用期間中の者について、健康状態、出勤状態、勤務状態及び職務能力等を総合的に判断して本採用の有無を決定する。この決定は試用期間の途中又は満了日に行う。

3 試用期間中の者の健康状態、出勤状態、勤務状態及び職務能力等を総合的に判断して、本採用の決定をすることが適当でないと判断したときは、試用期間を延長することがある。

4 試用期間は、これを勤続年数に算入する。

 
次回は、「試用期間」についての条文の解説をします。

2016年9月22日木曜日


18-20160922

今回は、歯科医院の従業員の「採用の取消」についての条文を作成し、その解説をします。

第〇条(採用の取消)

採用された者が、経歴を偽り又は虚偽の申告や陳述をしたことが明らかになった場合は、その者の採用を取り消す。但し、この規定は経歴詐称に関する懲戒解雇規定の適用を排除しない。

(解説)

1 採用後間もない時期に、DHの資格や経験年数等歯科の業務遂行に重大な影響を与えるような経歴の詐称や虚偽の申告・陳述が明らかになった場合、その者を解雇することもできますが、それよりも採用そのものを取り消すほうが労使双方にとってメリットがあると考えられる場合があります。このような場合に、労使双方の合意によって採用の取消ができるようにしたのがこの規定です(本文)。

2 一般的に経歴詐称を理由とする懲戒解雇は有効とされていますから、医院は経歴詐称を理由として懲戒解雇ができることを注意的に規定しました(但書)。

次回は、「試用期間」についての条文を作ります。


2016年7月15日金曜日

17-20160715

今回は、歯科医院の従業員の身元保証に関する条文の解説をします。

(解説)
1 身元保証には、①採用された者が従業員としての適格性を有することを保障する機能(人物保障機能)と、②従業員が医院に対して損害を発生させたときはその損害を賠償する機能(損害賠償機能)があります。

近年、メンタルな理由によって業務の遂行に支障をきたす労働者が増加する傾向にありますから、これに対処するためには、従業員に人物保障機能を主な内容とする「身元保証書」の提出を求めることが適切だと思います。

2 従業員が、就業に耐えられないような精神疾患に罹患したときは、当該従業員の休職・復職及び退職等について、身元保証人と冷静な話し合いによって解決することが必要になります。
円満な解決に導くためには、社会保険労務士にアドバイスを求めて話し合いに臨むことをお勧めします。

3 損害を賠償することを約した身元保証契約の有効期間は、期間を定めなかった場合には3年(身元保証に関する法律1条)、期間を定める場合には5年を上限とし、これを更新する場合には、更新のときから5年を超えてはならないと定められています(同法2条)。

なお、裁判所は自動更新の特約を認めていないので(札幌高裁判決 昭和52.8.24)、更新が必要なときは、身元保証契約の期間満了時に個別の同意を得るようにしましょう。

次回は、採用の取消に関する条文を作成し、その解説をします。

2016年7月2日土曜日

16-20160702

今回は、歯科医院が従業員を採用したときの身元保証に関する条文を作成します。

第〇条(身元保証)
1 身元保証人は独立して生計を営む親又はこれに代わる親族とする。但し、該当する者がいないときは、医院が認めた者を身元保証人とすることができる。

2 身元保証の期間は5年間とし、医院が必要と認めた場合は、身元保証の期間の更新を求めることができる。

3 身元保証人が次の各号のいずれかに該当するに至った場合は、直ちに新たな身元保証人を届け出なければならない。
①死亡し又は行方不明となった場合
②破産した場合
③その他医院が身元保証人を不適当と認めた場合

次回は、身元保証に関する条文の解説をします。


2016年6月16日木曜日


15-20160616

今回は、歯科医院の従業員を採用するときの提出書類に関する条文の解説をします。

(解説)
1 そもそも採用内定者に就業規則が適用されるかという問題があります。
最高裁は、採用内定通知をもって労働契約(始期付解約権留保付労働契約)が成立するとしていますから(大日本印刷事件<最高裁判決 昭和54.7.20>、電電公社近畿電報電話局事件<最高裁判決 昭和55.5.30>)、採用内定者にも就業規則の一部を適用することができると考えてよいでしょう。
ですから、採用内定者に対して、第1項の各種書類の提出を義務付けることに何ら問題はありません。

2 誓約書は、就業規則の内容を十分に説明したうえで提出させましょう。
私は、歯科医院に採用された方(採用内定者を含む)に対してオリエンテーションを実施し、そのあとに誓約書を提出していただいています。

3 新卒者と中途採用者とでは提出を求める書類が異なりますから、1項但書のように弾力的な運用ができるようにした方がいいでしょう。

4 採用時に提出を求めた書類の内容に変更があったときは、通勤手当、家族手当、扶養控除等に影響しますから、「2週間以内に」というように期限を明確にして、かつ文書で届出させることが大切です。

次回は、身元保証に関する条文を作成します。

2016年6月6日月曜日

14-20160606

今回は、歯科医院の従業員を採用するときの提出書類に関する条文を作成します。

第〇条(採用時の提出書類)
1.採用された者(採用内定者を含む)は、医院が指定した日までに次の書類を提出しなければならない。但し、その一部の提出を求めないことがある。
①誓約書
②身元保証書
③住民票記載事項証明書
④雇用保険被保険者証および年金手帳
⑤その他医院の指示する書類

2.前項の提出書類の記載事項に変動があったときは、変動があった日から2週間以内に文書で届け出なければならない。

次回は、歯科医院の従業員を採用するときの提出書類に関する条文の解説をします。


2016年6月1日水曜日


13-20160601

今回は、歯科医院の従業員の「採用選考のための提出書類」の条文を作成し、その解説をします。

第〇条(採用選考のための提出書類)
1 医院は、正社員として就職を希望する者に対して、採用選考のための次の書類を提出させる。但し、その一部の提出を求めないことがある。
①履歴書(医院指定の書式で、かつ自筆のものに限る)
②写真(3か月以内に撮影したもの)
③学校の卒業証明書又は卒業見込証明書及び学校成績表
④医院の指定する医師の発行する健康診断書
⑤その他医院の指示する書類
2 医院は、前項に基づき提出された書類については、提出後6か月以内に返却ないし焼却する。

(解説)
1 採用した人に対して提出を求める書類と、就職希望者に対する採用選考のための提出書類とは、区別して規定したほうがいいでしょう。

2 労働契約法16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されており、裁判所の判例でも解雇は厳しく制限されています。
特に正社員として採用した場合は、たとえその従業員に技術的若しくは患者さんに対する接遇上の問題があったとしても、それだけで解雇することは容易ではありません。ですから、採用選考の際、技術のレベルが明らかに低いと認められる人、患者さんとのコミュニケーションが難しそうな人、その他問題がありそうな人は採用しないことが院長の労務管理上の負担を軽減することになります。

3 多くの歯科医院では、DHの採用難という事情もあって、採用選考がとかく安易に行われる傾向があります。医院が求める有能な人材を採用するには、歯科医院の事情に精通した社会保険労務士の視点も取り入れて、採用選考の方法を工夫しなければならない時期にきているといえるでしょう。

次回は、「採用時の提出書類」についての条文を作成し、その解説をします。


2016年5月26日木曜日

12-20160526

今回は、歯科医院の従業員の「採用の手続」についての条文を作成し、その解説をします。

第〇条(採用の手続)
医院は、正社員として就職を希望する者について、書類選考、採用面接及び筆記試験等の選考手続きを経て採用者を決定する。

(解説)
1 就業規則には、正社員の採用手続きや採用基準を具体的に定めて、パートタイマーとの違いを明確にしておくことが大切です。 パートタイマーの選考手続きは、面接だけにとどめるのが適切でしょう。

2 採用手続きがずさんな歯科医院が多く見受けられます。特に医院の基幹的な労働力である正社員DHには一定の待遇を保障しなければならないのですから、技術的な能力や接遇の能力等を十分見分けられるような選考方法を工夫すべきです。
そうすれば、おのずからパートタイマーとの違いが明確になります。採用手続きや採用基準の違いは、雇用形態の区分の出発点ですから、労務管理上とても重要です。

次回は、「採用選考のための提出書類」についての条文を作りその解説をします。


2016年5月17日火曜日

11-20160517

今回は「就業規則による労働条件の変更」の解説をします。

(解説)
1 歯科医院では、近隣の歯科医院との競争上、あるいは患者さんの利便性のために休日や始業・終業時刻等を変更することがよくありますが、その変更権の行使が権利の濫用にならないように注意する必要があります。

2 労働契約法10条は、一定の条件で労働条件の不利益変更を規定していますから、本来このような規定がなくても就業規則に定められた労働条件や服務規律等を不利益に変更することができるはずです。しかし、従業員との信頼関係を維持する意味でも、変更権限を明確にしておくのが適切です。

[労働契約法10条]
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである
ときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

3 従業員を採用する際に、労働条件の不利益変更があり得ることを説明しておいた方がいいでしょう。

次回は、従業員の「採用の手続」に関する条文とその解説を書きます。

2016年5月9日月曜日

10-20160509

今回は、就業規則による労働条件の変更について書きます。

第○条(就業規則による労働条件の変更)
この規則に定める労働条件及び服務規律等は、法律の改正、経営環境の変動及び医院の経営内容の変化等の業務上の必要により、就業規則の変更手続を経て不利益に変更することがある。

(解説)
労働条件の変更は、労働契約上とても重要な問題です。間違った方法で行うと、従業員との信頼関係を損なうおそれがあります。このため、次回、詳しく解説します。

2016年5月2日月曜日

9-20160502

今回は、歯科医院の従業員の遵守義務についての条文を作成し、その解説をします。

第○条(従業員の遵守義務)
従業員は、この就業規則に定められた義務を誠実に履行し、債務の本旨に従った労務の提供を行うとともに、医院の秩序の維持に努めなければならない。

(解説)
1 就業規則は労使間の労働契約内容(合意内容)を定めたものです(労働契約法7条)。

2 「債務の本旨に従った労務の提供」とは、従業員がその労働契約内容(合意内容)にしたがって仕事を行うべきことをいいます。

3 本条は、従業員が、労働契約の内容を定めた就業規則を遵守すべきことを、あらためて確認するために設けました。

次回は、就業規則による労働条件の変更についての条文と解説を書きます。



2016年4月26日火曜日

8-20160426

今回は、就業規則を適用しない従業員についての条文を作ります。

2 次の非正規社員の名称で採用された従業員に対しては、この就業規則は適用しない。
①フルタイマー
②パートタイマー
③アルバイト
④契約従業員
⑤定年後嘱託従業員
⑥その他の特殊な雇用形態の名称で就労する者

(解説)
1就業規則が適用されない労働者の範囲を具体的に列挙したものです。

2①~⑤の雇用形態に区分できない労働者を適用除外とするためには、⑥のような包括規定を置くのがいいでしょう。歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士等と請負契約や業務委託契約を締結している場合であっても、これらの人が労働基準法上の労働者とみなされる場合があります。このような人に正社員の就業規則が適用されると歯科医院にとって不都合なこととなるので、それを避けるためにはこのような包括規定が必要です。

3①~④の雇用形態別に就業規則を作成しなければ、労働基準法89条に基づく就業規則作成義務違反となるので、注意が必要です。

次回は、従業員の順守義務について書きます。

2016年4月11日月曜日


7-20160411

今回は、歯科医院の従業員の定義に関する条文を作ります。

第○条 (従業員の定義と適用範囲)

1 この就業規則の適用範囲となる従業員とは、第〇条に定める採用に関する手続きを経て、正社員の名称で採用された者をいう。

(解説)

1 就業規則は労使間の労働契約の内容となり、労使双方を拘束するものですから、就業規則が適用される労働者の範囲を明確にすることはとても大切です。

2 歯科医院では、契約期間を定めずに雇用し、医院で定められた所定労働時間(例えば1日8時間、1週間40時間)を働き、医院の基幹労働力として一定の待遇が保障されている人を正社員と称するのが一般的です。

次回は、歯科医院の就業規則を適用しない従業員に関する条文を作ります。

2016年4月4日月曜日

6-20160404

今回から、いよいよ歯科医院の就業規則を作成します。


第○条(目的)

この就業規則は、○○医院の従業員の労働条件、服務規律、その他就業に関
する事項を定めることにより、業務の円滑な運営と職場の秩序の維持・確立
を目的とするものである。

(解説)
1.就業規則の中には、「この規則に定めのない事項については、労働基準法その他の法令の定めるところによる」のような規定を設けているものがあります。歯科医院の就業規則にこの規定を設ける場合は、社会保険労務士に相談しましょう。

2.就業規則の本質は、労働者の義務を定めるものですから、医院及び従業員は、この規則を誠実に遵守するとともに、互いに協力して業務の運営にあたらなければならない」のような規定を設ける必要があるときは、同様に社会保険労務士に相談しましょう。

次回は、従業員の定義と就業規則の適用範囲について条文を作成し、その解説をします。


2016年3月28日月曜日

5-20160328

就業規則の目的の4回目です。

パートタイマー就業規則も必要です

平成27年4月から、パートタイム労働法が改正施行され、正規従業員(正社員)とパートタイマーとの不合理な待遇が禁止されます。このため、合理的な待遇の違いを設ける必要があれば、正規従業員(正社員)の就業規則とは別に、パートタイマー就業規則を作成する必要があるでしょう。

就業規則の作成には専門家の視点が必要です。

就業規則は歯科医院と従業員との約束(労働契約)ですから、お互いにこれを守らなければなりません。就業規則を作成したあとで、自院の身の丈に合わないからといって、医院の都合で従業員の不利益になるような変更をすることは許されません。
ですから、就業規則の作成には、最初から専門家の視点を取り入れる必要があります。歯科医院の人事・労務に精通した専門家にお任せください。それぞれの歯科医院に合った就業規則本則、給与・昇給・賞与規程、退職金規程、労使協定、パートタイマー就業規則などを作成いたします。
次回からは、いよいよ歯科医院の就業規則の条文の作成と解説をします。

2016年3月23日水曜日

4-20160323

就業規則の目的の3回目です。

就業規則を見せながら説明する院長は信頼されます。

就業規則は、労働時間、休日、有給休暇、休職と職場復帰、給与・昇給・賞与、退職金、育児休業など、従業員にとって関心のある労働条件を定めています。従業員の守るべき職場規律や、守れなかったときの懲戒なども定めています。ですから、歯科医院で生じる様々な問題は、就業規則の規定に照らせば、その多くは解決することができでしょう。
 
加えて、DHなどの従業員を採用したときに、就業規則を用いてオリエンテーション(新入社員教育)をやると、医院に対する信頼度は格段に向上します。最近の労働者は自分の権利を主張する傾向が強くなっていますから、今後ますます労働条件に関する質問が多くなるでしょう。
 
その都度、院長が就業規則を見せながら説明すれば、お互いの信頼関係が生まれ、人材が定着するおおきな力になります。

次回は、パートタイマーの就業規則について書きます。
 
 
 
 

2016年3月17日木曜日

3-20160317

就業規則の目的の2回目です。

求人広告に活用できる就業規則を整えましょう

歯科医院と従業員との約束(労働契約)を明文化したものが就業規則です。労働基準法に定める基準に満たない労働条件を約束することはできませんが、それ以外の労働条件は歯科医院と従業員の間で自由に約束して就業規則に定めることができます。
したがって、就業規則に有用な人材を確保し定着させるしくみを整えていれば、ホームページや求人広告で自院を強くアピールすることが可能になります。
なぜなら、“就業規則に定めた従業員との約束を守ります”、“しっかり働いて、就業規則どおりゆっくり休む”、“就業規則で、妊娠・出産から職場復帰までしっかりサポート”、“就業規則で法定以上の有給休暇を定めています”など、他の歯科医院と差別化できるキャッチフレーズを自在に使えるからです。

就業規則を見せながら説明する院長は信頼されます。
次回は、就業規則は従業員にとって関心のある労働条件を定めていることについて書きます。


2016年3月9日水曜日

2-20160309


なぜ、就業規則が必要か?

その求人広告で求める人材が集まりますか?

歯科衛生士(以下「DH」といいます)を募集してもほとんど応募がない、面接をしたがどうも採用する気になれない、やっと確保したDHが1年も経たないうちに辞めてしまった、DHを何年も経験している割には技術的に未熟、ながく働いてくれそうだと期待していた矢先に退職されてしまったなど、歯科医院ではずっとこのような状況が続いています。

どんな求人募集をしているのか、歯科医院のホームページや求人広告を見て驚きました。

どこもほぼ似たり寄ったり。医院の全スタッフがニコニコ笑顔で写って、“みんな仲良し家族的な雰囲気”のような表現に代表されるように、なんとなく軽くて、演出的。

高い技術と患者さんに対する洗練された対応力を有する人材が必要なはずの職場なのに、それにふさわしい内容を盛り込んだ求人広告を見つけることはできません!

次回は、求人広告に活用できる就業規則の整え方について書きます。
1-20160309

第1回
歯科医院の就業規則作成講座(ブログ)の連載を開始します。

就業規則は、従業員募集に威力を発揮し、トラブルを未然に防止するとともに、従業員を定着させ、その質の向上に役立つ医院のルール。ぜひご覧ください。
次回は、歯科医院の就業規則の目的です。