2021年4月21日水曜日

 

146-20210421

 

今回も引続き「当然退職」について解説します。

(解説)

3 従業員が事前の連絡なしに突然出勤しなくなり、スマホに電話しても本人が出ることはなく、医院に連絡するようにメッセージを残しても何の反応もない状況が長期にわたる場合があります。多くの歯科医院は人員に余裕があるわけではないので、このような行方不明の状況が続くと業務に甚だしい支障を来すことになります。このような場合に、不就労を理由として解雇ができますが、そのためには使用者の解雇の意思表示が当該従業員に到達することが必要です。しかし、行方不明の場合にはそれが不可能ですから、民法98条の「公示送達」の手続をとらなければなりません。公示送達とは、民事訴訟法の規定に従って裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に掲載することによって使用者の解雇の意思表示が当該従業員に到達したとみなす制度です。

 

4 しかし、この公示送達は裁判所を用いる面倒な手続なので現実的ではありません。したがって、この就業規則では「行方不明となり50日以上医院に連絡しないで欠勤したとき」及び「従業員の所在が判明している場合であっても、医院からの連絡を避けて50日以上無断で欠勤する場合」を当然退職事由とし、欠勤開始日に退職の意思表示があったものとして取扱うことにしました。

 

5 行方不明等の期間を「50日」としたのは、民法627条2項を参考にしています。その内容は、月給制の歯科医院で、①使用者が、給与計算期間の前半に雇用契約を解約する意思表示をした場合、その計算期間の終了日をもって雇用契約が終了し、②使用者が、給与計算期間の後半に雇用契約を解約する意思表示をした場合、次の計算期間の終了日をもって雇用契約が終了するというものです。たとえば、給与計算期間が毎月1日から末日の月給制の歯科医院で、①使用者が7月1日に雇用契約を解約する意思表示をした場合、雇用契約は7月末日に終了し(この場合の最大日数は31日)、②使用者が7月16日に雇用契約を解約する意思表示をした場合、雇用契約は8月末日に終了します(この場合の最大日数は47日)。行方不明等の期間を設定するにあたり、従業員に最大限有利になるように考えると、50日(47日を上回る日数)に設定する必要があると思われます。

 

次回は「定年退職」の条文を作ります。

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