2021年4月1日木曜日

 

143-20210401

 

今回も引続き、「生理日の休暇」について解説します。

(解説)

5 年次有給休暇の発生には出勤率80パーセント以上が必要とされていますし(労働基準法39条1項)、精皆勤手当や昇給・賞与の支給に、「出勤率○パーセント以上の者をその対象とする」というような定めをしている場合があります。このような場合に、生理休暇を欠勤扱いすることは労働基準法68条違反になるのかという問題があります。これについては、①生理休暇中の賃金支払義務や欠勤の取扱いは労使の自治(労働契約、労働協約又は就業規則で定める内容)に委ねられているという側面と、②労使の自治に委ねられているといっても、それを無制限に認めると女性従業員(歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士、歯科受付など)が生理休暇を請求する権利の行使を抑制することになるという2つの側面から考える必要があります。

 

6 上記の問題について判例は、不利益取扱いの趣旨・目的、労働者が被る経済的不利益の内容・程度、権利行使に対する事実上の抑制力を総合して、それらの制度(「出勤率○パーセント以上の者をその対象とする」というような定め)が労働者の権利行使を抑制し、法の趣旨を失わせる程度のものか否かを検討し、それが認められれば公序(民法90条)に違反して無効になると判断しています(最高裁・平成元年12.14判決)。行政通達も、女性従業員(歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士、歯科受付など)に著しい不利益を課すことは法の趣旨に照らして好ましくないとしています。(注)民法90条「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」。

 

7 たとえば、「賞与は出勤率90パーセント以上の従業員に対して支給する。生理休暇を欠勤扱いとする。出勤率90パーセント未満の場合には賞与を全額不支給とする」というような給与(賞与)規定の場合はどうでしょぅか?このような規定内容は、女性従業員(歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士、歯科受付など)が生理休暇を請求する権利の行使を強く抑制することとなり、かつ女性従業員にとって著しい不利益となると考えられますから、このような規定は公序違反により無効となると思います。

 

次回は「当然退職」の条文を作ります。

0 件のコメント:

コメントを投稿