224-20230329
今回は、従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。
(解説)
1 労働基準法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない」と規定しています。ですから、たとえば歯科衛生士が医院の器物を損傷した場合に備えて、その相当額の支払を義務づける契約をすることは禁止されます。
2 しかし、同条は、損害が現実に発生した場合に、医院が従業員に損害賠償を請求することを禁止する趣旨ではありません。医院が従業員に損害賠償を請求するケースには次のような場合が考えられます。①従業員の行為によって損害を受けた医院が、直接当該従業員に損害賠償を請求する場合(民法415条<債務不履行による損害賠償請求>・709条<不法行為による損害賠償請求>。)、②従業員の行為によって損害を受けた第三者(たとえば患者さん)に対して医院が損害を賠償した後(民法715条<使用者責任による損害賠償>)、当該従業員に対して求償する場合(民法715条3項<求償権の行使>)。
次回も引続き「損害賠償」について考えます。