2023年3月29日水曜日

 224-20230329

今回は、従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。

(解説)

1 労働基準法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない」と規定しています。ですから、たとえば歯科衛生士が医院の器物を損傷した場合に備えて、その相当額の支払を義務づける契約をすることは禁止されます。

2 しかし、同条は、損害が現実に発生した場合に、医院が従業員に損害賠償を請求することを禁止する趣旨ではありません。医院が従業員に損害賠償を請求するケースには次のような場合が考えられます。①従業員の行為によって損害を受けた医院が、直接当該従業員に損害賠償を請求する場合(民法415条<債務不履行による損害賠償請求>・709条<不法行為による損害賠償請求>。)、②従業員の行為によって損害を受けた第三者(たとえば患者さん)に対して医院が損害を賠償した後(民法715条<使用者責任による損害賠償>)、当該従業員に対して求償する場合(民法7153項<求償権の行使>)。

次回も引続き「損害賠償」について考えます。

2023年3月22日水曜日

 223-20230322

今回は、損害賠償に関する条文を作成します。

第〇条(損害賠償)

従業員が故意若しくは過失又は不作為によって医院に損害を与えたときは、懲戒されたことによって損害の賠償を免れることはできない。

次回は、「損害賠償」について解説をします。

2023年3月16日木曜日

 

222-20230316

今回は「懲戒の加重」について解説します。

(解説)

5 二重処罰禁止の原則とは、最初の軽い懲戒処分の対象となった非違行為を、後の重い懲戒処分の対象にはできないという原則です。しかし、二重処罰禁止の原則に抵触するかどうかの判断はかなり難しいといえます。

6 そこで歯科医院の実務上は、最初の非違行為に対しては、懲戒処分ではない「警告書」による警告や「注意書」による注意を行なうことをお薦めしています。そのような方法をとれば、その対象となった非違行為が再度行なわれた場合に重い懲戒処分に処したとしても、二重処罰にはあたらないと考えられます。実務上は判断が難しい場合が多いですから、社会保険労務士に相談することをお薦めします。

次回は「損害賠償」について考えます。

2023年3月8日水曜日

221-20230308

今回も引続き「懲戒の加重」について解説します。

(解説)

3 この就業規則では、懲戒を加重することができる5つの具体的な要件を規定しています。このうち「④過去に類似の非違行為を行なって懲戒処分を受けたことがあるとき」については少し注意することがあります。

4 初回の非違行為に対していきなり懲戒解雇や諭旨解雇のような重い処分を科すのではなく、まずは「けん責」や「出勤停止」などの軽い処分を行ない、その後同じような非違行為を行なった場合に重い処分を科す場合には二重処罰の禁止に抵触することになるので注意が必要です。

次回も「懲戒の加重」について解説します。

2023年3月1日水曜日

 220-20230301

今回は「懲戒の加重」について解説します。

(解説)

1 懲戒を加重する(重いレベルの懲戒処分を選択する)場合は、処分の相当性を慎重に検討する必要があります。218回で解説したように、どのような懲戒処分を選択するかは懲戒権者である使用者(院長)の裁量に属しますが、その処分は従業員の行為と処分とのバランス(相当性)が要求されます。

2 使用者(院長)がこの裁量判断を誤り、不当に重い処分を選択すれば、使用者の懲戒権の行使は、たとえ就業規則に定める懲戒事由に該当する事実がある場合でも、その処分が客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認できないときは、権利の濫用として無効になります(労働契約法15条)。

次回も引続き「懲戒の加重」について考えます。