151-20210526
今回は、「合意退職」に関する条文を作成します。
第〇条(合意退職)
1 従業員が自己の都合により退職しようとするときは、退職希望日の30日以上前に医院に対して退職の意思を伝え、医院と従業員双方合意のうえ退職日を決定する。
2 前項によって退職日が決定しない場合、医院は従業員が退職希望日に退職することを承諾するものとする。
3 前2項によって退職日が決定したときは、従業員はすみやかに退職届を提出しなければならない。
次回は、「合意退職」についての条文の解説をします。
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150-20210519
今回も引続き「定年退職」について解説します。
(解説)
4 従業員の定年を満65歳とした場合に、60歳から65歳までの賃金をどうするかという問題があります。
従来、賃金の決定については基本的に労使の自治に委ねられており、事業主は「合理的な裁量の範囲」の賃金を提示しなければならないと考えられています。高年齢者雇用安定法の改正の趣旨は、厚生年金の支給開始年齢が引き上げられたことによって無年金・無収入となる高齢者が発生することを防止することにあります。したがって、高齢者の賃金が、年金を受給するまでの間に著しく低い水準であれば、事業主の合理的裁量の範囲を逸脱することになります。特に歯科医院では、たとえば歯科衛生士は60歳を過ぎても引続き歯科衛生士としての職務を行うのが普通だと考えられます。このような場合は、職務の軽減がほとんどないことになるので、当該歯科衛生士の賃金を引き下げることは合理的な裁量の範囲を否定される可能性が高くなるので注意が必要です。
次回は「合意退職」の条文を作ります。
149-20210512
今回も引続き「定年退職」について解説します。
(解説)
3 厚生年金法の改正により、老齢厚生年金の支給開始年齢が満60歳から満65歳に段階的に引き上げられました。このため、「60歳から65歳の高齢者の雇用」をどのようにすべきかという問題がクローズアップされるようになり、従来の主流であった60歳の定年退職は見直しを迫られることになりました。そこで、高年齢者雇用安定法が2004年と2012年に改正され、使用者に対して65歳までの雇用確保措置を講ずべき義務が課されることとなりました。その内容は、①65歳までの定年年齢の引き上げ、②継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者を定年後も引続き雇用する制度)、③定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければならないとするものです。歯科医院では、優秀な歯科衛生士の慢性的な確保難が続いている状況を考慮して雇用確保措置の①を採用することとし、この就業規則では「従業員の定年は満65歳とし、誕生日の属する月の給与締切日をもって定年退職する」こととしました。
次回も引続き「定年退職」の解説をします。
148-20210506
今回は、「定年退職」について解説します。
(解説)
1 定年退職とは、従業員が一定の年齢に到達したときに、労使双方の意思表示を必要とせず当然に雇用契約を終了させる制度です。退職に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項とされていますから(労働基準法89条3号)、必ず就業規則に規定しなければなりません。定年退職の制度は、定年年齢に到達するまでの雇用を保障する機能(雇用保障機能)と定年年齢に到達することによって雇用関係を終了させる機能(雇用終了機能)を兼ね備えており、労使双方にとって合理的な制度だとして支持され定着してきました。
2 定年年齢を何歳にするかについて、従来、労使の自治に委ねられてきましたが、高齢社会の到来に伴って「高年齢者雇用安定法」が制定され、定年年齢を60歳以上とすることが義務になりました(同法8条「事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない」)。この高年齢者雇用安定法8条は強行規定なので、歯科医院の就業規則に歯科衛生士の定年年齢を60歳未満と定めている場合には、その就業規則の規定は高年齢者雇用安定法8条違反として無効になり、最初から定年の定めがなかったことになります。
次回も引続き「定年退職」の解説をします。