2023年4月26日水曜日

 

228-20230426

今回は、安全衛生の義務に関する条文を作成します。

第〇条(安全衛生の義務)

1. 従業員は、法令及び医院が定める安全・衛生の諸規則を守り、医院の指示に従い、労働災害の防止に努めなければならない。

2. 従業員は、次の事項を遵守しなければならない。

① 安全衛生に関する規則及び安全管理者等の命令・指示に従うこと。 

② 職場の整理整頓に努め、災害を未然に防止すること。

③ 消火設備その他危険防止のために設けられた設備を許可なく除去、変更するなど、その効力を失わせるような行為をしないこと。

④ 療養及び病後の就業については、医院の指示に従うこと。

3.業務上の災害が発生したときは、あらかじめ医院が定めた方法によって対処しなければならない。

次回は、「安全衛生の義務」について解説をします。

2023年4月19日水曜日

 

227-20230419

今回も従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。

(解説)

5 医院が従業員に支払うべき賃金から損害賠償額(損害金)を天引き(相殺)できるかという問題があります。労働基準法は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(労働基準法24条1項)と定めていますから、賃金と損害賠償額(損害金)を相殺することは、この賃金の全額払の原則に違反して許されません(関西精機事件:最高裁昭和31年判決)。それでは、従業員の自由な意思に基づいて、医院と従業員との合意によって相殺を行なうことはどうでしょうか?私は、損害賠償責任の有無やその程度、合意に至った経緯、従業員の退職引留め手段となっているか否か等によっては、相殺の効力が否定される場合があると考えています。相殺を安易に行なうと労使の紛争になりやすいので、社会保険労務士等に相談されることをお薦めします。

次回は「安全衛生の義務」に関する条文を考えます。

2023年4月12日水曜日

 226-20230412

今回も従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。

(解説)

4 従業員の業務遂行上の過失(不注意・ミス)によって医院に損害が発生した場合は、損害の公平な負担や信義則の観点から、従業員の責任が制限されます。裁判例では、従業員に過失があっても故意や重大な過失が認められない場合には、損害賠償請求(第224回2の①参照)や求償請求(同2の②参照)が認められないケースがあります。たとえば「エーディーディー事件(京都地裁判決 平成23年)」は、「被用者においてそれについて故意又は重過失があったとは証拠上認められないこと、使用者が損害であると主張する売上減少、ノルマ未達などは、ある程度予想できるところであり、報償責任・危険責任の観点から本来的に使用者が負担すべきリスクであると考えられること、使用者の主張する損害額は2,000万円を超えるものであり、被用者の受領してきた賃金額に比しあまりにも高額であり」、そのような「ことなどからすると、使用者が主張するような損害は、結局は取引関係にある企業同士で通常に有り得るトラブルなのであって、それを労働者個人に負担させることは相当ではなく、使用者の損害賠償請求は認められないというべきである。」と判示しています。

次回も引続き「損害賠償」について考えます。

2023年4月5日水曜日

 225-20230405

今回も従業員に対する「損害賠償」の請求について解説します。

(解説)

3 従業員が故意に不法行為(窃盗、横領、背任、暴行など)を行い又は債務不履行(業務の懈怠、雇用契約に伴う付随的義務違反<守秘義務違反、競業避止義務違反>など)に及んだ場合は、医院に生じた損害の全額を賠償請求できることに異論はありません。しかし、従業員が業務を遂行する過程で、過失(不注意・ミス)によって医院に損害を与えた場合に、当該従業員に全額の賠償を求めることには大いに疑問があります。なぜなら、業務遂行上の不注意やミスから生じる損害は、従業員を指揮命令し、従業員を使用することから利益を得ている使用者(医院)が危険を負担すべきであると考えられるからです(これを「危険責任・報償責任の法理」といいます)。

次回も引続き「損害賠償」について考えます。