2022年8月31日水曜日

 

200-20220831

前回に引続き「時間外労働、休日労働、出張等の業務命令を拒んだ場合」や日常業務における上司の指示・命令に違反した場合(業務命令違反)について解説します。

(解説)

5 歯科医院で、上司から患者さんの診療の内容を記録すべきことを命じられた歯科衛生士が、再三にわたって当該業務命令に違反して記録を残さなかったために降職・降格処分に処せられた場合を考えてみましょう。記録を残さなかったという業務命令違反が、他の歯科衛生士の業務を遅滞させあるいは阻害するなど職場秩序を現実に侵害したような場合は、降職・降格処分が重すぎることはないと考えられます。しかし、職場秩序の侵害の程度が上記のような現実的・具体的な危険性を有するとは認められない場合には、当該懲戒処分は懲戒の相当性を欠き無効とされる可能性があります。

次回も引続き「けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由」について解説します。

2022年8月24日水曜日

 

199-20220824

前回は、「けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由」のうち、「出退勤の遵守事項」に違反した場合や「欠勤、遅刻、早退、私用外出の遵守事項」に違反した場合(職務懈怠)について解説しました。今回は、「時間外労働、休日労働、出張等の業務命令を拒んだ場合」や日常業務における上司の指示・命令に違反した場合(業務命令違反)について解説します。

(解説)

4 けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の懲戒処分が有効になるためには、①時間外労働、休日労働、出張等の業務命令や上司の指示・命令(以下「業務命令等」という)が、労働契約の範囲内の有効なものかどうか(時間外労働、休日労働命令の場合は、労働基準法に違反していないかどうかの問題もあることに注意)、②業務命令等が有効とされた場合でも、歯科衛生士等の従業員が業務命令等に違反したことによって歯科医院の職場秩序が現実に侵害されたかどうか、③業務命令等違反の程度と懲戒処分を比べて懲戒処分が重すぎないか(懲戒の相当性)などが問題となります。

次回も引続き「けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由」について解説します。

2022年8月10日水曜日

 

198-20220810

今回から「けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由」について解説します。けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由は多岐にわたるので、そのうちの主要な事由について解説を加えます。

(解説)

1 歯科医院において院長が歯科衛生士等の従業員に、けん責、減給、出勤停止及び降職・降格等の懲戒権を行使できるのは、従業員の行為が単なる労働義務違反(債務不履行)にとどまらず、職場の秩序を現実に侵害した場合又は侵害の実質的危険が考えられる場合です。

2 「出退勤の遵守事項」に違反した場合や「欠勤、遅刻、早退、私用外出の遵守事項」に違反した場合を考えてみましょう(48回「出退勤」、50回「欠勤、遅刻、早退、私用外出」、52回「私傷病欠勤と医師の診断」、54回「無断欠勤」参照)。これらの行為は、それ自体としては単なる労働義務違反(債務不履行)なので、これらの行為がけん責、減給、出勤停止及び降職・降格の対象になるのは、医院の業務に具体的な支障を及ぼし、他の歯科衛生士などに著しい迷惑を与えるなど、懲戒を行なうのに相応しいレベルにまで達している場合に限られます。

3 歯科医院は通常予約制を採用しているので、正当な理由がなく頻繁に無断欠勤をされると医院は大変困ります。無断欠勤はそれ自体は労働義務違反(債務不履行)ですが、再三の注意・指導にもかかわらず改善の見込みがなく、かつ、人事配置に支障を及ぼすようなレベルに至ったときは、降職・降格の懲戒事由に該当すると考えます。

次回も引続き「けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由」について解説します。

2022年8月3日水曜日

 

197-20220803

今回は、「けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由」に関する条文を作成します。

第○条(けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由)

1.従業員が次の各号の1つに該当するときは、その情状に応じ、けん責、減給、出勤停止又は降職・降格に処する。

   第○条(遵守事項)に違反した場合

   第○条(セクシャルハラスメントの禁止)に違反した場合

   第○条(パワーハラスメントの禁止)に違反した場合

   第○条(私物持込禁止・所持品検査)に違反した場合

   第○条(貸与パソコンの私用禁止とモニタリング)に違反した場合

   第○条(携帯電話・スマートフォン等の利用)に違反した場合

   第○条(機密情報管理に関する遵守事項)に違反した場合

   第○条(出退勤の遵守事項)に違反した場合

   第○条(欠勤、遅刻、早退、私用外出の遵守事項)に違反した場合

   正当な理由なく、時間外労働、休日労働、出張等の業務命令を拒んだ場合

   経費の不正な処理をした場合

   その他業務上の指示又は医院の諸規定に違反した場合

   職場外の非行行為により医院の名誉・信用を損ない、もしくは医院に損害を及ぼし、又は職場秩序を乱した場合

⑭ その他前各号に準じる程度の不都合な行為があった場合

2.他人を教唆又は幇助して前項各号の行為をさせた従業員は、その情状に応じ、けん責、減給、出勤停止又は降職・降格に処する。

次回は、「けん責、減給、出勤停止及び降職・降格の事由」に関する条文の解説をします。