174-20211124
今回も引き続き「普通解雇」について解説します。
(解説)
19 この就業規則の普通解雇事由の第2は、「勤務成績又は業務能率が不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき」となっています。従業員は雇用契約に基づいて適正な(雇用契約の本旨に基づいた)労務を提供する義務を負っています。したがって、勤務成績又は業務能率が不良な場合は労働義務の不完全履行とされ、解雇事由となりえます。
20 勤務成績又は業務能率が不良で、向上の見込みがないことを理由とする解雇が正当とされるのは、それが雇用契約の継続を期待しがたいほど重大な程度に達している場合に限られます。すなわち、①従業員に求められる職務の達成度が著しく低く、使用者がその業務を遂行するうえで支障をきたすなど、これ以上雇用の継続を期待できないほど重大な程度に達していることが必要です。加えて、②教育・研修等によって労働能力が改善・向上する余地があるのであれば、それらを行なうことによって雇用を継続する努力(解雇回避努力)が求められるということです。
21 歯科衛生士は患者さんの健康にかかわり、高度の職務遂行能力や成果が求められる職種です。しかし、多くの歯科医院では、歯科衛生士を中途採用する際に、その技術や接遇の能力について一定の基準を設け、それに到達しているか否かについて実際に何らかの確認のテストを行なっているわけではありません。したがって、採用後に「労働能力が劣り、向上の見込みがない」という理由で解雇が許されるのは、教育・研修等を行ない、解雇を回避する努力を相当程度尽くした場合に限られることになります。業種は異なりますが、使用者が従業員の能力不足の原因を究明し具体的な指導・改善等を講じていない一方、従業員が能力向上に取り組む姿勢を示している場合について、従業員の能力不足を理由とする解雇は、解雇権濫用により無効とした裁判例があります。
次回は、第3の「普通解雇事由」について解説します。