153-20210609
今回も引続き「合意退職」について解説します。
(解説)
2 この条文の第1項では、退職希望日の30日以上前に医院に退職の意思を伝えることとしています。この退職の意思表示は、必ずしも退職願(退職届)のような文書でなくても口頭やメールでもかまいません。従業員の退職希望日をそのまま医院が承諾すれば有効な合意退職となります。しかし、歯科医院では、今日、優秀な歯科衛生士を確保することが難しくなっており、加えて予約制で運営していることから、従業員の退職希望日通りの退職を承諾すると医院の運営に支障をきたし、ひいては患者さんに迷惑をかけることにもなりかねません。このような場合は、医院と従業員双方で話合いをして退職日を決めることになります。退職の意思表示が、退職希望日の30日以上前でない場合も、従業員の退職希望日をそのまま医院が承諾すればそれはそれで有効な合意退職となりますが、そうでない場合は同じように話合いによって退職日を決めることになります。
3 話合いによって退職日が決まらない場合は、この条文の第2項で「医院は従業員が退職希望日に退職することを承諾するものとする」としました。従業員には「退職の自由」が保証されているというのがその理由です。退職の自由については、「辞職」の条文の解説で詳しく述べることにします。歯科医院は他の業種に比べても労働移動が比較的頻繁に行われる職場です。従業員の退職を制限することは、たとえば歯科衛生士が転職することによってスキルを向上させ、あるいはより良い労働条件を獲得するチャンスを奪うことになります。したがって、話合いによって退職日が決まらない以上、従業員に退職の自由が保障されていることから、医院は従業員が退職希望日に退職することを承諾せざるを得ないのです。
次回も「合意退職」の解説をします。
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