2022年6月8日水曜日

 

189-20220608

引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。

(解説)

8 この就業規則は「減給」について、「始末書を提出させて将来を戒めるとともに減給する。この場合、減給の額は1事案について平均賃金の1日分の半額とし、複数事案については一賃金支払期間の減給総額が当該賃金支払期間における賃金総額の10分の1を超えないものとする。但し、減給総額が当該賃金支払期間における賃金総額の10分の1を超える部分については、翌月以降の賃金を減ずる」と規定しています。この規定は、過大な減給を抑制する趣旨で設けられた労働基準法91条に添ったものです。

9 懲戒処分としての減給は、たとえば歯科衛生士が歯科医院で働いた結果として発生した賃金債権を一部消滅させることですから、欠勤・遅刻・早退のように労務不提供を理由とする賃金カットや、配転・降格等による賃金減額などは、懲戒処分としての減給には該当しません。

次回も引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。

2022年6月1日水曜日

 

188-20220601

引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。

(解説)

6 この就業規則の懲戒の種類は、①けん責、②減給、③出勤停止、④降格・降職、⑤諭旨解雇、⑥懲戒解雇の6種類です。以下、これらを順次解説します。

7 この就業規則は「けん責」について、「始末書を提出させて将来を戒める」と規定しています。ここで始末書とは、自己の違法な行為を認めて謝罪し、将来同様の行為を行なわないことを誓約する文書のことです。この「けん責」について、従業員(たとえば歯科衛生士)が始末書を提出しない場合にはどのように対応したらいいのでしょうか。私は、業務命令で始末書の提出を強制することも、始末書を提出しないことに対してさらに懲戒を科すこともできないと考えます。しかし、このような従業員は改善する姿勢に乏しいと考えられますから、人事考課で不利に評価されることになるでしょう。

次回も引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。

2022年5月25日水曜日

 

187-20220525

引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。

 (解説)

4 懲戒処分が有効と認められるためには、次の4つの要件が必要です。すなわち、①使用者が懲戒権を有すること、②従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当すること(懲戒事由該当性)、③行なった懲戒が懲戒処分の濫用と評価されないこと、④弁明の機会を与えるなど就業規則で定められた手続違反がないこと等です。

5 ①使用者が懲戒権を有するためには、懲戒処分の根拠となる就業規則規定(例:歯科衛生士が歯科医院の機密情報を漏洩した場合<懲戒事由>及びこれに対する懲戒処分<減給等懲戒処分の種別>)が当該処分時に制定されていることが必要であり、これが制定されていない場合、当該処分は根拠を欠くものとして無効になります。

②従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当すること(懲戒事由該当性)については、就業規則の文言だけで形式的に判断するのではなく、実質的に判断する必要があり、加えて、歯科医院の職場秩序を現実に侵害した(前例で言えば、機密を漏洩したことによって医院に損害が発生した)ことを要するとされています。

③行なった懲戒が懲戒処分の濫用と評価されないことについては、従業員の行為がたとえ懲戒事由に該当する場合でも、それに対する懲戒処分の相当性(行為と処分のバランス。前例で言えば、軽微な機密の漏洩に対して最も重い懲戒解雇に処するような場合)が問題とされ、それが否定されれば(バランスを失する場合は)懲戒権の濫用となります。

④弁明の機会を与えるなど就業規則で定められた手続違反がないことについては、就業規則で従業員に弁明の機会が与えられているにもかかわらず、その手続を経過せずに懲戒処分を行なった場合は、重大な手続違反とされ、懲戒権の濫用と評価されます。

次回も引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。

2022年5月11日水曜日

 

186-20220511

今回から「懲戒の種類及び程度」について解説します。

(解説)

1 この就業規則では、①けん責、②減給、③出勤停止、④降職・降格、⑤諭旨解雇、⑥懲戒解雇等6種類の懲戒処分を定めています。使用者は、従業員の労働契約上の義務違反に対して解雇権や損害賠償請求権を有するわけですが、これらとは別にどうして懲戒処分を科すことができるのでしょうか?

2 これについて、裁判例は、懲戒権を行使するためには、あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要するとしています(フジ興産事件・最高裁平成15年判決)。また、労働契約法は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする」と規定しています(労働契約法15条)。

3 このように、懲戒権は、就業規則の懲戒規定が、内容の合理性と周知を要件に労働契約の内容となり、懲戒権を発生させると考えられます。このような考え方によれば、懲戒権は、就業規則に規定されてはじめて発生するので、就業規則に定めた以外の理由によっては懲戒を行なうことはできないということになります。

次回も引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。

2022年3月16日水曜日

 

185-20220316

今回は、「懲戒の種類及び程度」に関する条文を作成します。

第○条(懲戒の種類及び程度)

医院は、次の区分により懲戒を行なう。

   けん責・・・・・始末書を提出させて将来を戒める。

   減給・・・・・・始末書を提出させて将来を戒めるとともに減給する。この場合、減給の額は1事案について平均賃金の一日分の半額とし、複数事案については1賃金支払期間の減給総額が当該賃金支払期間における賃金総額の10分の1を超えないものとする。但し、減給総額が当該賃金支払期間における賃金総額の10分の1を超える部分については、翌月以降の賃金を減ずる。

   出勤停止・・・・始末書を提出させて将来を戒めるとともに7労働日以内の期間を定めて出勤を停止し、その間の賃金を支給しない。

   降職・降格・・・始末書を提出させて将来を戒めるとともに、職位を解任もしくは引下げ又は資格のランクを降ろす。

   諭旨解雇・・・・懲戒解雇相当の理由がある場合で本人に反省が認められるときは、解雇事由に関し本人に説諭して解雇することがある。諭旨解雇となる者には、その状況を勘案して退職金の一部を支給しないことがある。

   懲戒解雇・・・・予告期間を設けることなく即時に解雇する。但し、労働基準法20条1項但書の定める解雇予告除外事由がある場合には、解雇予告手当を支給しない。懲戒解雇となる者には、その状況を勘案し、退職金の全部又は一部を支給しない。

次回は、「懲戒の種類及び程度」に関する条文の解説をします。

2022年3月9日水曜日

 

184-20220309

今回も引続き「退職又は解雇時の義務」について解説します。

(解説)

3 業務の引継ぎがなされずに医院が損害を被ったときは、当該従業員に対して損害賠償を請求することができます。しかし、そのためには、医院が現実に損害を被っており、かつ引継ぎが行なわれなかったことと損害との間に因果関係があることが必要です。しかも挙証責任は医院側にあります。したがって、損害賠償が認められるためのハードルはそれなりに高いといえます。やはり、特に患者さんに関する重要な情報は、歯科衛生士や歯科受付などが個人的に管理せず、できる限りオフィシャルに共有する仕組みを構築し、業務の引継ぎがなされずに医院が損害を被らないような組織にしておくことが大切です。

次回は「懲戒の種類及び程度」に関する条文を作成します。

2022年3月2日水曜日

 

183-20220302

今回は「退職又は解雇時の義務」について解説します。

(解説)

1 この就業規則では、退職又は解雇時の従業員の義務に関して、①業務の引継ぎ、②貸与物品の返還、③債務の返済、④居住施設(寮など)からの退去を規定しています。これらの義務が円滑に履行されれば問題はないのですが、突然出勤しなくなったり、退職を申出たあとに有給休暇をとってそのまま出勤しなくなったり、従業員が業務の引継ぎを拒否するなど、必ずしも円滑に履行されるとは限りません。

2 歯科医院の場合、業務の引継ぎが円滑になされることは医院の運営にとってきわめて重要です。私は、どのような事項を、誰に、どのような方法で引継げばいいのか等を雇用契約の付属文書に具体的に定め、かつ従業員(歯科衛生士、歯科受付など)に説明しておくように指導しています。それでもこれに従わずに退職する従業員に対してどのような対応策が考えられるでしょうか?これについては次回で解説します。

次回も「退職又は解雇時の義務」について解説します。