192-20220629
引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。
(解説)
15 この就業規則は「諭旨解雇」について、「懲戒解雇相当の理由がある場合で本人に反省が認められるときは、解雇事由に関し本人に説諭して解雇することがある。諭旨解雇となる者には、その状況を勘案して退職金の一部を支給しないことがある」と規定しています。諭旨解雇は、本人に反省が認められるなどの情状等を斟酌して、懲戒解雇を若干緩和した処分であり、退職金も全部又は一部が支払われることがあります。
16 裁判例としては、①上司・同僚に対する度重なる脅迫、強要、いやがらせ等の非違行為が重大で懲戒解雇にも値する場合は、退職金を一部支給して諭旨解雇を選択したことは相当であって、解雇有効と判断された例(日本電信電話事件)や、②職場で上司に対する暴行事件を起こした従業員に対し、暴行事件から7年以上経過した後にされた諭旨退職処分(退職願の提出を勧告し即時退職を求めるもの。退職願の提出勧告を含めて「諭旨解雇」の意思表示であると考えられる)が懲戒権濫用として解雇無効と判断された例(ネスレ日本事件)などがあります。
17 諭旨解雇が懲戒解雇を若干緩和した処分だとしても、従業員を失職させる点で不利益を与えることに変わりはありません。したがって、歯科衛生士、歯科助手、歯科受付などの従業員に対して諭旨解雇を行なう場合は、懲戒解雇に準じた厳しい適法性判断が求められることに注意が必要です。
次回も「懲戒の種類及び程度」について解説します。