2022年1月26日水曜日

 

180-20220126

今回も引き続き「整理解雇」について解説します。

(解説)

33 被解雇者選定の公正性については、歯科医院の場合、ひとりで子どもを育てている歯科衛生士が少なからずいることから、解雇による経済的打撃が大きな従業員は特に慎重に選定すべきでしょう。

34 説明・協議義務について、最近の裁判例はこの要素を重視する傾向にあります。その対象は解雇の対象となる従業員です。説明・協議の場をもたない場合はもとより、客観的な経営資料を十分提示せず抽象的な説明をするに過ぎない場合や、使用者が協議・交渉を一方的に打ち切って整理解雇を強行したような場合は、説明・協議義務違反となります。

次回は「普通解雇」の手続について解説します。

2022年1月19日水曜日

 

179-20220119

今回も引き続き「整理解雇」について解説します。

(解説)

31 人員削減の必要性について、最近の裁判例は、人員削減をしなければ倒産必至の状況であることまでは要求せず、「高度の経営上の必要性」があれば足りるとして、使用者の経営判断を尊重する傾向にあります。歯科医院の場合、歯科衛生士等の従業員を新規募集するなど人員削減と矛盾するようなことを行なわない限り、人員削減の必要性が肯定されるものと考えます。

32 解雇回避努力義務については、使用者は、従業員にとって解雇よりも打撃の少ない措置(歯科医院の場合、新規採用の停止、昇給の停止、賞与の減額、残業の削減、有期契約従業員の雇止めなど)を講じる義務があるとされています。コロナ禍を理由とする有期契約従業員の整理解雇について、従業員を休業させれば6割の休業手当の支給で済み、しかも「雇用調整助成金」を申請すれば支給した休業手当の大半が補填されるのに、これを申請しなかった場合は、解雇回避努力義務を尽くしたとはいえないとした裁判例があります(仙台地裁決定・令和2.8.21)。

次回も「整理解雇」について解説します。

2022年1月12日水曜日

 

178-20220112

今回も引き続き「整理解雇」について解説します。

(解説)

29 整理解雇は、①経営困難を理由とする「危機回避型」と、②余剰人員を削減する「合理化型」に分けられます。複数の労働者を解雇するようなイメージがありますが、使用者の経営上の都合を理由とする人員削減であれば、たとえ1名の解雇であっても整理解雇として取扱うべきだとされています。したがって、歯科医院が経営上の都合で歯科衛生士、歯科助手、歯科受付等を一人でも解雇する場合は整理解雇となり、以下に述べる厳しい解雇規制があります。

30 整理解雇が解雇権の濫用にならないかどうかについて裁判例は、整理解雇の4要素(①人員削減の必要性があること、②使用者が整理解雇回避のための努力を尽くしたこと、③被解雇者の選定基準及び選定が公正であること、④労働者に対して必要な説明や協議を行なったこと)を設定し、これらの4要素を含む諸事情を総合考慮して整理解雇の有効性を判断しています。

次回も「整理解雇」について解説します。