2021年12月22日水曜日

 

177-20211222

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

27 この就業規則の普通解雇事由の第5は、「事業の縮小その他やむを得ない業務の都合によるとき」となっています。広義の普通解雇には、従業員の責めに帰すべき事由による解雇のほかに、従業員に責任がなく使用者の経営上の都合を理由とする解雇(整理解雇)が含まれます。整理解雇とは使用者が経営不振を打開するために人員削減(雇用の調整)を目的として行なう解雇です。

28 整理解雇は、従業員側(歯科衛生士、歯科助手、歯科受付など)に責任がないにもかかわらず行なわれる解雇なので、166回から176回までに解説した普通解雇以上に厳しい規制があります。事業の縮小などは、憲法221項によって歯科医院が自由に行なうことができますが(営業の自由)、その反面、整理解雇は従業員の雇用を保障する必要から厳しい解雇規制が行なわれます。

次回も引続き「整理解雇」について解説します。

2021年12月13日月曜日

 

176-20211213

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

25 この就業規則の普通解雇事由の第4は、「協調性を欠き、他の従業員の業務遂行に悪影響を及ぼすとき」となっています。従業員は、職場で上司や同僚と協調して労務を提供することが求められています。ですから、自分勝手な行動によって業務上の混乱を招き、指導にも従わず、改善がみられない場合や、他の従業員の負担を増大させたり、業務に著しい支障を生じさせているような場合は解雇の合理的な理由となりえます。特に歯科医療の場合は、院長を中心に、同僚の歯科衛生士や歯科助手、歯科受付、歯科技工士などとのチーム医療が円滑に運営されないと、患者さんの健康に影響を及ぼすことになりますから、一人一人が協調性に配慮して行動することが求められます。

26 歯科医院の例ではありませんが、参考になる裁判例を紹介します。中途採用した従業員が、同僚らに対して日常的に高圧的、攻撃的な態度をとってトラブルを発生させ、ネットのサイトで業務と関係のないことを行なうなどして職務の遂行に重大な支障を生じさせました。何度も面談を実施し、注意、けん責処分による改善の機会を与えたにもかかわらず言動が変わらなかったことから、就業規則の解雇事由(「協調性を欠き、他の従業員の職務に支障をきたすとき」)に該当するとして解雇を有効とした裁判例(メルセデスベンツファイナンス事件)があります。

次回は、第5の「普通解雇事由」について解説します。

2021年12月8日水曜日

 

175-20211208

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

22 この就業規則の普通解雇事由の第3は、「勤務態度が不良で、注意しても改善しないとき」となっています。勤務態度が不良とは、①無断欠勤、②正当な理由がない遅刻や早退、③勤務状況の不良などのいわゆる勤務懈怠(労働義務違反=債務不履行)をいいます。このような労働義務違反の程度が重大で、雇用の継続を期待しがたい程度に達している場合に解雇事由に該当することになります。

23 ①及び②のような労働義務違反が解雇理由となるのは、当該行為が反複・継続的に行なわれ、使用者の注意・指導によっても改善の見込みがない場合に限られます。しかし、当該行為が反復・継続的でなく、回数が少ない場合であっても、それが業務に重大な影響を及ぼし、使用者に損害を与えるような場合には、解雇の合理的な理由となります。歯科医院の場合には予約制をとっているので、たとえば歯科衛生士が無断欠勤や遅刻をくりかえし、院長が注意しても改善されない場合には医院の業務に支障を及ぼすといえるので、解雇の合理的な理由になるでしょう。

24 ③は、従業員が外形的には業務に従事しているようにみえるものの、勤務状況や勤務態度をみると、実質的に適正な就労とはいえない場合をいいます。従業員は、業務に必要な注意を払って誠実に労働する義務を負っていますから、外形上は労働義務を履行しているようにみえても、実質的にその内容が劣悪であれば重大な労働義務違反とされ、解雇されてもやむを得ないこととなります。業種は異なりますが、配置換えに不満をいだき、上司が指示した仕事を行なわず、勤務成績が著しく不良で、再三指導・教育しても勤務態度に改善がみられない従業員に対する懲戒解雇が有効とされた裁判例があります(日本消費者協会事件<東京地裁平成5年>)。

次回は、第4の「普通解雇事由」について解説します。