2021年9月29日水曜日

 

167-20210929

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

4 労働基準法19条1項本文は、「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。」と規定しています。この「療養」は、「業務上の疾病」に基づくものであることが必要であって、業務外疾病にその原因があるものは含まれません。

5 解雇には手続的な制限があります。すなわち、使用者が労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前にその予告をしなければならず、30日前に予告をしない場合は、30日分の平均賃金(「解雇予告手当」といいます)を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。平均賃金は、原則として、解雇日(解雇日直前の賃金締切日)以前の3か月間の賃金総額(賞与や臨時に支払われる賃金などを除きます)をその期間の総日数で除して計算します。なお、この予告日数は、平均賃金を支払った日数だけ短縮することができます(労働基準法20条2項)。

6 多くの歯科医院では、解雇予告や解雇予告手当に関する実務がルーズになっているように感じます。そこで、これを正しく運用するために具体例で考えてみたいと思います。たとえば、歯科衛生士、歯科助手、歯科受付などの従業員を10月31日に解雇する場合を例にします。10月1日に解雇予告すれば、10月2日から10月31日まで丁度30日なので、解雇予告手当を支払う必要はありません。しかし、10月10日に解雇予告した場合は、10月11日から10月31日まで21日なので、平均賃金の9日分(30日分―21日分=9日分)の解雇予告手当を支払う必要があります。日数は、解雇予告日の翌日から起算することに注意してください。

 

次回も「普通解雇」の解説をします。

2021年9月22日水曜日

 

166-20210922

今回から数回にわたり「普通解雇」について解説します。

(解説)

1 解雇とは、使用者が労働契約を将来に向けて一方的に解約することです。解雇の条文を解説する前に、歯科医院で特に注意すべき解雇のポイントについて解説します。

2 はじめに、解雇は時期的に制限されます。すなわち、①業務上の負傷・疾病による療養のため休業する期間及びその後の30日間、②産前産後の期間及びその後の30日間は解雇が制限されます(労働基準法19条1項本文)。なお、この期間中は、他に解雇事由がある場合でもそれを理由とする解雇は無効となります。

3 解雇制限期間中に「解雇予告」することは許されるかという問題があります。なかなか難しい問題です。裁判例は、肯定するものと否定するものに分かれています。労働基準法19条1項本文の趣旨は、労働者を失業の不安から解放することにあると考えられますから、私は、解雇制限期間中に「解雇予告」することはできないと考えています。

 

次回も引続き「普通解雇」の解説をします。

2021年9月15日水曜日

 

165-20210915

今回は、「普通解雇」に関する条文を作成します。

第○条(普通解雇)

1 従業員が次のいずれかに該当するときは、普通解雇する。

   身体又は精神の傷害等により業務に耐えられないと認められたとき。

   勤務成績又は業務能率が不良で向上の見込みがなく他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき。

   勤務態度が不良で、注意しても改善しないとき。

   協調性を欠き、他の従業員の業務遂行に悪影響を及ぼすとき。

   事業の縮小その他やむを得ない業務の都合によるとき。

   その他医院の従業員(正社員)として、適格性がないとき。

2 前項の規定により従業員を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をするか、又は予告に代えて平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払う。但し、次の各号のいずれかに該当する従業員を解雇する場合はこの限りではない。

①労働基準監督署長の認定を受けて、第○条○号の懲戒解雇を行う従業員

②日々雇入れる従業員(1か月を超えて引続き雇用された者を除く                                  

③2か月以内の期間を定めて使用する従業員(その期間を超えて引続き雇用された者を除く)

④試用期間中の従業員(14日を超えて引続き雇用された者を除く)

 次回は、「普通解雇」に関する条文の解説をします。