73-20180529
今回は、「割増賃金に関するトラブル」の裁判例を紹介し、そのトラブルの解決方法を考えます。
(解説)
10 割増賃金の計算の基礎に入れなくてもよい賃金については、前回(第72回)の解説8で述べたとおりです。
このうち家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当については、労働と直接関係が薄く、個人的事情に基づいて支払われるものであって、時間外労働等がなされたからといって割増賃金として増額されるべき性格のものではなく、したがって割増賃金の計算の基礎から除かれたものであると考えられています。
11 家族手当と通勤手当が、割増賃金の計算の基礎になるかどうかが争われた裁判例があります。
「壺坂観光事件(奈良地裁判決 昭和56年)」です。
この事件では、家族手当が家族構成に関係なく一律に支給され、通勤手当は通勤距離等に関係なく一律に支給されていました。
裁判所は、家族手当や通勤手当は上記のような理由に基づいて例外的に割増賃金の計算の基礎から除かれたものであるから、名称が家族手当や通勤手当であっても、家族構成員の属性や数に関係なく、また通勤距離等とは無関係に一律に支給されているような場合には、除外賃金には当たらないと判示しました。
12 歯科医院でよく問題になるのは住宅手当です。
従業員に一律に一定額を支給しているケースが見受けられます。これも従業員の個別の事情に応じた手当額にしなければ除外賃金とは認められません。
たとえば、家賃の一定割合、住宅ローン返済額の一定割合を補助するような運用にする必要があります。
次回は、「公民権行使の時間」についての条文を作ります。