2016年11月15日火曜日


23-20161115



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。



(解説)

4 業務外の傷病が、休職期間中に治癒する可能性が低い場合(たとえば、交通事故による脳損傷で意識不明の状態が続いているような場合)には、休職を認めずに解雇できるかの問題があります。これについて、私は、次のような理由で、原則として休職の措置をとるべきであろうと思います。①休職期間中に治癒するかどうかの判断が困難な場合が多いこと、②解雇は、客観的に合理的な理由と社会的相当性を要求されることから、それらの要件をめぐってあとでトラブルになりやすいこと、③いきなり解雇すると、他の従業員に不安や動揺を生じさせるおそれがあること(歯科医院の多くは少人数で従業員同士の結びつきが強いので、この傾向が強くなります)

、④休職を認めた場合、従業員にとっては、社会保険料の折半負担や傷病手当金の給付を受けられるなどのメリットがあること。したがって、実務上は、業務外の傷病を解雇事由ではなくて休職事由と考えて、治癒の蓋然性を判断することなく、休職を命じるほうが無難だといえます。



5 従業員が傷病手当金を受給するためには、歯科医院が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の制度に加入し、当該休職する従業員がその被保険者資格を有していることが必要です。法人の歯科医院及び常時5人以上の従業員を使用する個人経営の歯科医院は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業所です。従業員が常時5人未満の個人経営の歯科医院は強制適用事業所ではありませんが、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意し、厚生労働大臣の許可を受けることにより適用事業所となることができます。傷病手当金は、人材を定着させる有効な方法のひとつですから、小規模の歯科医院も社会保険に加入したいものです。妊娠に伴う“つわり”に対しても傷病手当金を申請することができますから、女性の職場である歯科医院にとっては、まさになくてはならない制度であるといえるでしょう。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。

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