2016年11月28日月曜日


25-20161128



今回は、歯科医院の従業員の「復職」についての条文を作成します。



第〇条(復職)

1 休職期間中に休職事由が消滅したときは、すみやかにその旨を医院に通知し、復職願を提出しなければならない。

2 休職の事由が傷病等による場合は、休職期間満了時までに治癒し(民法493条に定める本旨弁済すなわち従来の業務を健康なときと同様に遂行できる程度に回復することをいう。以下同じ)、又は復職後ほどなく治癒することが見込まれると医院が認めた場合に限り復職させることとする。この場合、医院の指定する医師の治癒証明(診断書)を提出しなければならない。

3 前項による診断書の提出に際して、医院が診断書を作成した医師に対する文書または面談による事情聴取を求めた場合、従業員はその実現に協力しなければならない。

4 復職後の職務内容、労働条件、その他待遇等に関しては、状況に応じて業務の軽減等の措置をとる場合には、降格・給与の減額等の調整を行うことがある。

5 休職期間が満了してもなお就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。



次回は、「復職」についての条文の解説をします。

2016年11月22日火曜日


24-20161122



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。



(解説)

6 業務外の傷病によって休職している期間は、給与を支給せず、勤続年数に算入しないことを明らかにしておくことが必要です。



7 従業員は、休職期間中であっても社会保険の保険料や住民税を負担しなければなりません。その支払方法をあらかじめ取り決めておく必要があります。医院から休職中の従業員に対して、メールでそれらの金額を通知し、医院の銀行口座に振込んでもらう方法が最も便利です。



8 業務外の傷病による休職は、労務の提供を免除又は拒否し、休職期間中に傷病を治癒して職場に復帰することによって、再び労務の提供を可能にするための期間ですから、休職した従業員は、当然療養に専念する義務があります。このため、毎月、治療の状況や休職の必要性等を医師に証明してもらうようにしましょう。診断書の作成費用は、従業員が負担するようにします。



次回は、休職している従業員の「復職」に関する条文の解説をします。

2016年11月15日火曜日


23-20161115



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。



(解説)

4 業務外の傷病が、休職期間中に治癒する可能性が低い場合(たとえば、交通事故による脳損傷で意識不明の状態が続いているような場合)には、休職を認めずに解雇できるかの問題があります。これについて、私は、次のような理由で、原則として休職の措置をとるべきであろうと思います。①休職期間中に治癒するかどうかの判断が困難な場合が多いこと、②解雇は、客観的に合理的な理由と社会的相当性を要求されることから、それらの要件をめぐってあとでトラブルになりやすいこと、③いきなり解雇すると、他の従業員に不安や動揺を生じさせるおそれがあること(歯科医院の多くは少人数で従業員同士の結びつきが強いので、この傾向が強くなります)

、④休職を認めた場合、従業員にとっては、社会保険料の折半負担や傷病手当金の給付を受けられるなどのメリットがあること。したがって、実務上は、業務外の傷病を解雇事由ではなくて休職事由と考えて、治癒の蓋然性を判断することなく、休職を命じるほうが無難だといえます。



5 従業員が傷病手当金を受給するためには、歯科医院が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の制度に加入し、当該休職する従業員がその被保険者資格を有していることが必要です。法人の歯科医院及び常時5人以上の従業員を使用する個人経営の歯科医院は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業所です。従業員が常時5人未満の個人経営の歯科医院は強制適用事業所ではありませんが、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意し、厚生労働大臣の許可を受けることにより適用事業所となることができます。傷病手当金は、人材を定着させる有効な方法のひとつですから、小規模の歯科医院も社会保険に加入したいものです。妊娠に伴う“つわり”に対しても傷病手当金を申請することができますから、女性の職場である歯科医院にとっては、まさになくてはならない制度であるといえるでしょう。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。

2016年11月2日水曜日


22-20161102



今回は、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。



(解説)

1 「休職」は、従業員が労務不能(長期欠勤又は仕事が不完全ないし不適切な状態)に陥った場合に、労働契約は維持しつつ労務の提供を免除する制度です。



2 業務外の傷病による欠勤がどの程度続いたときに休職を命じるべきかについては、歯科医院の業務の特殊性を考慮する必要があります。歯科医院の業務は、予約制度を前提としたチーム医療で運営されていますから、従業員の欠勤が続けば業務に深刻な影響が出ます。このような歯科医院の業務の特殊性を考慮して、休職を命じる時期は、従業員の欠勤が「継続、断続を問わず日常業務に支障をきたす程度(おおむね1か月程度)続くと認められるとき」とするのが適切でしょう。



3 欠勤するわけではないが、仕事が不完全な場合も休職を命じることができます。特に最近では、うつ病等の精神疾患が増える傾向にありますから、その対策も考えておく必要があります。従業員の中でも歯科衛生士は、患者さんの健康に重大な影響を与える業務を行いますから、その業務が不完全ないし不適切な場合は、患者さんの顧客満足を損ない、場合によってはクレームの原因ともなり、医院の経営に重大な影響を与えます。したがって、歯科医院では、従業員の仕事が不完全ないし不適切な場合は、欠勤の有無を問わず、早期に休職を命じる必要があるでしょう。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「休職」に関する条文の解説をします。