2022年1月12日水曜日

 

178-20220112

今回も引き続き「整理解雇」について解説します。

(解説)

29 整理解雇は、①経営困難を理由とする「危機回避型」と、②余剰人員を削減する「合理化型」に分けられます。複数の労働者を解雇するようなイメージがありますが、使用者の経営上の都合を理由とする人員削減であれば、たとえ1名の解雇であっても整理解雇として取扱うべきだとされています。したがって、歯科医院が経営上の都合で歯科衛生士、歯科助手、歯科受付等を一人でも解雇する場合は整理解雇となり、以下に述べる厳しい解雇規制があります。

30 整理解雇が解雇権の濫用にならないかどうかについて裁判例は、整理解雇の4要素(①人員削減の必要性があること、②使用者が整理解雇回避のための努力を尽くしたこと、③被解雇者の選定基準及び選定が公正であること、④労働者に対して必要な説明や協議を行なったこと)を設定し、これらの4要素を含む諸事情を総合考慮して整理解雇の有効性を判断しています。

次回も「整理解雇」について解説します。

2021年12月22日水曜日

 

177-20211222

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

27 この就業規則の普通解雇事由の第5は、「事業の縮小その他やむを得ない業務の都合によるとき」となっています。広義の普通解雇には、従業員の責めに帰すべき事由による解雇のほかに、従業員に責任がなく使用者の経営上の都合を理由とする解雇(整理解雇)が含まれます。整理解雇とは使用者が経営不振を打開するために人員削減(雇用の調整)を目的として行なう解雇です。

28 整理解雇は、従業員側(歯科衛生士、歯科助手、歯科受付など)に責任がないにもかかわらず行なわれる解雇なので、166回から176回までに解説した普通解雇以上に厳しい規制があります。事業の縮小などは、憲法221項によって歯科医院が自由に行なうことができますが(営業の自由)、その反面、整理解雇は従業員の雇用を保障する必要から厳しい解雇規制が行なわれます。

次回も引続き「整理解雇」について解説します。

2021年12月13日月曜日

 

176-20211213

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

25 この就業規則の普通解雇事由の第4は、「協調性を欠き、他の従業員の業務遂行に悪影響を及ぼすとき」となっています。従業員は、職場で上司や同僚と協調して労務を提供することが求められています。ですから、自分勝手な行動によって業務上の混乱を招き、指導にも従わず、改善がみられない場合や、他の従業員の負担を増大させたり、業務に著しい支障を生じさせているような場合は解雇の合理的な理由となりえます。特に歯科医療の場合は、院長を中心に、同僚の歯科衛生士や歯科助手、歯科受付、歯科技工士などとのチーム医療が円滑に運営されないと、患者さんの健康に影響を及ぼすことになりますから、一人一人が協調性に配慮して行動することが求められます。

26 歯科医院の例ではありませんが、参考になる裁判例を紹介します。中途採用した従業員が、同僚らに対して日常的に高圧的、攻撃的な態度をとってトラブルを発生させ、ネットのサイトで業務と関係のないことを行なうなどして職務の遂行に重大な支障を生じさせました。何度も面談を実施し、注意、けん責処分による改善の機会を与えたにもかかわらず言動が変わらなかったことから、就業規則の解雇事由(「協調性を欠き、他の従業員の職務に支障をきたすとき」)に該当するとして解雇を有効とした裁判例(メルセデスベンツファイナンス事件)があります。

次回は、第5の「普通解雇事由」について解説します。

2021年12月8日水曜日

 

175-20211208

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

22 この就業規則の普通解雇事由の第3は、「勤務態度が不良で、注意しても改善しないとき」となっています。勤務態度が不良とは、①無断欠勤、②正当な理由がない遅刻や早退、③勤務状況の不良などのいわゆる勤務懈怠(労働義務違反=債務不履行)をいいます。このような労働義務違反の程度が重大で、雇用の継続を期待しがたい程度に達している場合に解雇事由に該当することになります。

23 ①及び②のような労働義務違反が解雇理由となるのは、当該行為が反複・継続的に行なわれ、使用者の注意・指導によっても改善の見込みがない場合に限られます。しかし、当該行為が反復・継続的でなく、回数が少ない場合であっても、それが業務に重大な影響を及ぼし、使用者に損害を与えるような場合には、解雇の合理的な理由となります。歯科医院の場合には予約制をとっているので、たとえば歯科衛生士が無断欠勤や遅刻をくりかえし、院長が注意しても改善されない場合には医院の業務に支障を及ぼすといえるので、解雇の合理的な理由になるでしょう。

24 ③は、従業員が外形的には業務に従事しているようにみえるものの、勤務状況や勤務態度をみると、実質的に適正な就労とはいえない場合をいいます。従業員は、業務に必要な注意を払って誠実に労働する義務を負っていますから、外形上は労働義務を履行しているようにみえても、実質的にその内容が劣悪であれば重大な労働義務違反とされ、解雇されてもやむを得ないこととなります。業種は異なりますが、配置換えに不満をいだき、上司が指示した仕事を行なわず、勤務成績が著しく不良で、再三指導・教育しても勤務態度に改善がみられない従業員に対する懲戒解雇が有効とされた裁判例があります(日本消費者協会事件<東京地裁平成5年>)。

次回は、第4の「普通解雇事由」について解説します。

2021年11月24日水曜日

 

174-20211124

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

19 この就業規則の普通解雇事由の第2は、「勤務成績又は業務能率が不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき」となっています。従業員は雇用契約に基づいて適正な(雇用契約の本旨に基づいた)労務を提供する義務を負っています。したがって、勤務成績又は業務能率が不良な場合は労働義務の不完全履行とされ、解雇事由となりえます。

20 勤務成績又は業務能率が不良で、向上の見込みがないことを理由とする解雇が正当とされるのは、それが雇用契約の継続を期待しがたいほど重大な程度に達している場合に限られます。すなわち、①従業員に求められる職務の達成度が著しく低く、使用者がその業務を遂行するうえで支障をきたすなど、これ以上雇用の継続を期待できないほど重大な程度に達していることが必要です。加えて、②教育・研修等によって労働能力が改善・向上する余地があるのであれば、それらを行なうことによって雇用を継続する努力(解雇回避努力)が求められるということです。

21 歯科衛生士は患者さんの健康にかかわり、高度の職務遂行能力や成果が求められる職種です。しかし、多くの歯科医院では、歯科衛生士を中途採用する際に、その技術や接遇の能力について一定の基準を設け、それに到達しているか否かについて実際に何らかの確認のテストを行なっているわけではありません。したがって、採用後に「労働能力が劣り、向上の見込みがない」という理由で解雇が許されるのは、教育・研修等を行ない、解雇を回避する努力を相当程度尽くした場合に限られることになります。業種は異なりますが、使用者が従業員の能力不足の原因を究明し具体的な指導・改善等を講じていない一方、従業員が能力向上に取り組む姿勢を示している場合について、従業員の能力不足を理由とする解雇は、解雇権濫用により無効とした裁判例があります。

次回は、第3の「普通解雇事由」について解説します。

2021年11月17日水曜日

 

173-20211117

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

16 普通解雇は、雇用契約で約束した内容の(=債務の本旨にしたがった)労務の提供ができなくなった(=債務不履行となった)ために雇用契約を終了させるものです。

17 この就業規則の普通解雇事由をひとつひとつ解説してゆきましょう。第1に「身体又は精神の傷病等により業務に耐えられないと認められたとき」は普通解雇すると規定しています。従業員の健康状態が悪化して労働能力が低下することは、解雇事由のひとつになりす。しかし、健康状態の悪化が直ちに解雇事由となるわけではなく、それが債務の本旨にしたがった労務の提供を期待できない程度に重大なものであることが必要です。そのポイントは、①現在就労している業務が本当に就労困難なのかどうか慎重に判断すること。②現在の業務が就労困難だとしても、雇用契約上就労可能な軽易業務があれば、使用者はその業務を提供することによって解雇を回避するよう努力する義務(解雇回避努力義務)を負い、それをしないで解雇した場合は合理的理由を否定されること。③従業員の能力・適性、職務内容、事業規模等を勘案して、使用者に解雇回避措置を期待することが客観的にみて困難な場合は、解雇は正当とされること。歯科医院では、②が見落としやすいので注意が必要です。

18 業務外傷病(私傷病)について休職制度がある場合、休職制度は解雇を猶予する趣旨で設けられているものなので、これを利用させずに直ちに解雇するのは解雇回避努力義務に違反し、その解雇は合理的理由を否定されます。小規模の歯科医院では、歯科衛生士に軽易業務(17の②)を提供することが容易ではなく、かといって直ちに解雇することは避けたいという場合に、この休職制度は利用価値があります。

次回は、第2の「普通解雇事由」について解説します。

2021年11月9日火曜日

 

172-20211109

今回も引き続き「普通解雇」について解説します。

(解説)

14 解雇は、従業員に債務不履行(労働義務違反やその付随義務違反)があり、かつ、それが労働契約の継続を期待しがたい程度に達している場合に肯定されます。すなわち、解雇が正当とされるためには、単に従業員に債務不履行の事実が存在するだけでは足りず、それが雇用を終了させてもやむを得ないと認められる程度に達していることが必要になります。

15  ポイントは、次の4点です。①従業員の解雇事由が重大で労働契約の履行に支障を生じさせていること。それが反復・継続的であって是正の余地がないこと。②使用者が事前に注意・警告・指導等によって是正に努めていること。③使用者が、職種転換等の措置を行い、解雇を回避する努力をしていること。④使用者は、客観的に期待可能な範囲で解雇を回避する義務を負うものであること(従業員の能力・適性・職務内容・事業規模等を勘案して、使用者に解雇を回避する措置を期待することが客観的に困難な場合は、解雇は正当とされます)。②及び③を「解雇回避努力義務」といい、④を「期待可能性の原則」といいます。この2つは、歯科医院が、従業員(歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士、歯科受付)を解雇する場合に特に注意すべきポイントです。

 

次回から「普通解雇」事由を、ひとつひとつ具体的に解説します。