2016年12月28日水曜日


28-20161228



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。



(解説)

6 職場復帰するには、休職の原因となった傷病が従来の業務を健康時と同様に遂行できる程度に「治癒」していなければなりません。しかし、現実には「治癒」に至らずに職場復帰したため、業務の軽減等の措置が必要になる場合があります。本条4項はこれに備えて、降格や給与減額があり得ることを規定したものです。



7 休職期間が満了しても職場復帰ができない場合に、使用者(院長)の一方的な意思表示によって「解雇」するのか、労使の特別な意思表示を要しない「自然退職」になるのかが問題になります。本条5項は、「自然退職」になることを明らかにしたものです。「解雇」にした場合には、労働基準法20条により、30日以上前の予告が必要になりますし、予告がない場合には、予告手当を支払わなければなりません。加えて、解雇にした場合は、労働契約法16条の解雇の要件(解雇するには、「客観的に合理的な理由」と「社会的相当性」が必要)が争われることにもなりかねないので、「自然退職」としておくのが適切です。



次回は、歯科医院の従業員の「復職の取消」に関する条文を作成します。

2016年12月13日火曜日


27-20161213



前回に引き続き、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。



(解説)

4 本条2項で、復職するには「治癒」していることが必要であり、これを証明するために従業員のほうから治癒証明(診断書)を提出すべきことを規定しました。しかし、医師は当該休職している従業員(たとえば、歯科衛生士等)の具体的な業務内容やその患者さんに対する接遇の重要性等を把握・理解していないので、客観的には就労に耐えない状態であるにもかかわらず、診断書には「就労可能」と記載されていたり、「当分の間は軽度の作業に限る」などの条件をつける場合があります。また、医師の診断書は、当該休職している従業員本人や家族の意向を反映している場合が多く、必ずしも客観的に「就労可能」ではない場合があります。



5 医師の診断書が上記のようなものだとすると、院長としては診断書に記載された内容についてその真意を確認するために、当該診断書を作成した医師と面談をする必要に迫られます。しかし、医師の守秘義務や個人情報保護の理由によって、医師から面談を拒否される場合が多いのが現状です。このため、本条3項で、本来「治癒」したことの証明責任を負っている当該休職している従業員に対して、医師との面談に協力すべきことを義務付けることとしました。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。

2016年12月6日火曜日


26-20161206



今回は、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。



(解説)

1 どのような理由で休職したかによって、復職の手続は異なります。休職の理由が私傷病以外の理由であるときは、医院に復職願を提出するだけで十分です。



2 私傷病休職の場合は、どのような場合に復職が可能か、その復職基準を明確にしておくことがとても重要です。特に近年増加しているうつ病等の精神疾患は、完治することが容易ではないと言われていますので、就業規則で明確に復職基準を定め、復職が可能か否かについて厳格に判断してゆくことが、結果としてトラブルを回避することにつながります。本条2項は、私傷病における復職基準と復職手続を定め、歯科医院の従業員が仕事に復帰するためには、休職の原因となった死傷病が「治癒」していなければならないと規定しています。



3 治癒した状態とは、「出勤可能」「平易な作業であれば就労可能」「短時間であれば就労可能」というような状態では足りません。民法493条に定める債務の本旨に従った弁済(本旨弁済)とは、医院と従業員が合意した労働契約の内容にしたがって、従前の業務を健康なときと同様に遂行できるということです。したがって、その程度に回復していなければ、就労を拒否されてもやむを得ないということになります。



次回も、引き続き、歯科医院の従業員の「復職」に関する条文の解説をします。