2022年10月26日水曜日

 

207-20221026

今回も「諭旨解雇及び懲戒解雇の事由」について解説します。

(解説)

2 懲戒処分(懲戒解雇や諭旨解雇を含む)が有効と認められるためにはどのような要件が必要なのか復習しておきましょう。①使用者が懲戒権を有すること。使用者が懲戒権を有するためには、懲戒処分の根拠となる就業規則規定(例:歯科衛生士が歯科医院の機密情報を漏洩した場合<懲戒事由>及びこれに対する懲戒処分<減給等懲戒処分の種別>)が当該処分時に制定されていることが必要であり、これが制定されていない場合、当該処分は根拠を欠くものとして無効になります。②従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当すること(懲戒事由該当性)。これについては、就業規則の文言だけで形式的に判断するのではなく、実質的に判断する必要があり、加えて、歯科医院の職場秩序を現実に侵害した(たとえば、機密を漏洩したことによって医院に損害が発生した)ことを要するとされています。③行なった懲戒が懲戒処分の濫用と評価されないこと。これについては、従業員の行為がたとえ懲戒事由に該当する場合でも、それに対する懲戒処分の相当性(行為と処分のバランス。前例で言えば、軽微な機密の漏洩に対して最も重い懲戒解雇に処するような場合)が問題とされ、それが否定されれば(バランスを失する場合は)懲戒権の濫用となります。④弁明の機会を与えるなど就業規則で定められた手続違反がないこと。これについては、就業規則で従業員に弁明の機会が与えられているにもかかわらず、その手続を経過せずに懲戒処分を行なった場合は、重大な手続違反とされ、懲戒権の濫用と評価されます(解説187回参照)。

次回も「懲戒の種類及び程度」について解説します。

2022年10月12日水曜日

 

206-20221012

今回は「諭旨解雇及び懲戒解雇の事由」について解説します。

(解説)

1 「懲戒解雇」は、懲戒(制裁)として行なわれる解雇であり、懲戒の中で最も重い処分です。懲戒解雇された従業員は、働く職場と退職金請求権を失うだけでなく、不名誉な処分を受けたために再就職が困難になるという重大な不利益を被ります。したがって、懲戒解雇が適法になされたかどうかについては厳しく判断されることになります(解説193回参照)。「諭旨解雇」は、本人に反省が認められるなどの情状等を斟酌して、懲戒解雇を若干緩和した処分ですが、従業員を失職させる点で不利益を与えることに変わりはありません。したがって、諭旨解雇を行なう場合でも懲戒解雇に準じた厳しい適法性判断が求められることに注意する必要があります(解説192回参照)。

次回も引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。

2022年10月5日水曜日

 

205-20221005

今回は、「諭旨解雇及び懲戒解雇の事由」の第1項第17号から第22号まで及び第2項の条文を作成します。

第○条(諭旨解雇及び懲戒解雇の事由)

1.従業員が次の各号の1つに該当するときは、その情状に応じ諭旨解雇又は懲戒解雇に処する。但し、改悛の情が顕著であること、過去の勤務成績が優良であったこと等を勘案し、前条の処分にとどめることがある。

   労働契約締結時に最終学歴、職歴、経歴等を偽り、医院の判断を誤らせた場合

   正当な理由がなく、医院が命じる転勤、配置転換、職種変更を拒んだ場合

   医院の金銭又は物品を窃取、詐取又は横領した場合

   その他業務上の指示又は医院の諸規程に著しく違反した場合で行為態様が悪質な場合

㉑ 職場外非行行為により医院の名誉・信用を著しく損ない又は医院に損害を与えた場合、その他職場秩序が著しく乱された場合でその行為態様が悪質な場合

㉒ その他前各号に準じる程度の不都合な行為があった場合

2.他人を教唆又は幇助して前項各号の行為をさせた従業員は、その情状に応じ諭旨解雇又は懲戒解雇に処する。但し、改悛の情が顕著であること、過去の勤務成績が優良であったこと等を勘案し、前条の処分にとどめることがある。

次回は、「諭旨解雇及び懲戒解雇の事由」に関する条文の解説をします。