2023年1月25日水曜日

 216-20230125

今回も「弁明の機会」について解説します。

(解説)

3 就業規則に口頭又は文書による弁明の機会を付与することが定められているにもかかわらず、これを行なわずに懲戒解雇したのは重大な手続違反であり当該懲戒解雇は無効と判示した裁判例(千代田学園事件:東京高裁判決平成16年)があります。

4 就業規則がない歯科医院や就業規則があっても弁明の機会の付与についての規定がない歯科医院の場合はどうなるのでしょうか?「懲戒解雇」は、懲戒(制裁)として行なわれる解雇であり、懲戒の中で最も重い処分です。懲戒解雇された従業員は、働く職場と退職金請求権を失うだけでなく、不名誉な処分を受けたために再就職が困難になるという重大な不利益を被ります。「諭旨解雇」は、本人に反省が認められるなどの情状等を斟酌して、懲戒解雇を若干緩和した処分ですが、従業員を失職させる点で不利益を与えることに変わりはありません。したがって、懲戒解雇や諭旨解雇のような重い処分を行なう場合は、たとえ就業規則に弁明の機会の付与についての規定がない場合であっても、弁明の機会を付与することが必要だと考えます。同旨の裁判例があります(ビーアンドヴイ事件:東京地裁判決平成22年)。

次回は「懲戒の減軽」に関する条文を考えます。

2023年1月11日水曜日

 

215-20230111

今回は「弁明の機会」について解説します。

(解説)

1 懲戒処分が有効と認められるためには、次の4つの要件が必要です。すなわち、①使用者が懲戒権を有すること、②従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当すること(懲戒事由該当性)、③行なった懲戒が懲戒処分の濫用と評価されないこと、④弁明の機会を与えるなど就業規則で定められた手続違反がないこと等です。

2 すべての懲戒処分について④の弁明の機会を付与することを義務づけると、懲戒手続が煩雑になるので、この就業規則では、諭旨解雇又は懲戒解雇に処する場合に限って弁明の機会を付与することにしました。就業規則で従業員に弁明の機会が与えられているにもかかわらず、その手続を経過せずに懲戒処分を行なった場合は、重大な手続違反とされ、懲戒権の濫用と評価されます。

次回も「弁明の機会」について解説します。