2018年6月27日水曜日


76-20180627

今回も「公民権行使の時間」について解説します。

(解説)
1 公民としての権利行使や公の職務執行が短時間で終了する場合は、医院の業務に支障を及ぼさないが、議員などは長期にわたる活動であり、裁判員なども数日以上に及ぶ場合がある。
このような場合には、医院の業務に支障を与えることになるので、解雇又は休職処分が許されるかという問題が生じる。
市会議員への就任を理由に解雇したケースについて「著しく業務に支障を生じる場合、或いは業務の支障の程度が著しいものでなくとも、他の事情と相俟って、社会通念上相当の事由があると認められる場合」には解雇は許されるとする裁判例(社会新報社事件 昭和55年浦和地裁判決)がある一方、「地方議会議員への就任ということだけを理由として、当該労働者を、解雇、休職、その他の不利益処分に付することは許されない」とする裁判例(森下製薬休職事件 昭和55年大津地裁決定)がある。
歯科医院の場合、他の職務への転換ができず、代替のDHを確保することが困難な事情にあるので、労働関係の継続を期待しがたいといえる状況になった場合には、解雇も許されるのではないかと考えます。

2 従業員に必要な時間を付与した場合、その時間に対応する賃金を有給にするか、無給にするかについては労働基準法に規定がなく、労使の自治にゆだねられています。この就業規則では、原則として有給とするが、日当が支給されるような公の職務の執行については、これに相当する額を給与から控除できるとしました。

次回は「休日及び休日の振替」の条文を作ります。

2018年6月13日水曜日


75-20180613

今回は、「公民権行使の時間」について解説します。

(解説)
1 「公民」とは、「国家又は公共団体の公務に参加する資格ある国民」であって、「公民としての権利」とは、「公民に認められる国家又は公共団体の公務に参加する権利」のことです。
主なものは、①選挙権及び被選挙権、②最高裁判所裁判官の国民審査、③特別法の住民投票、④憲法改正の国民投票、⑤地方自治法に基づく住民の直接請求権などです。
しかし、選挙応援、私的な権利を実現するための訴訟(たとえば、民事損害賠償請求)などは公民としての権利に含まれないと考えられています。

2 「公の職務」とは、国または地方公共団体の公務の適正な執行をはかる職務や、民意を反映するための職務を指します。
主なものは、①議員、②裁判員、検察審査会等の委員、③裁判所・労働委員会の証人、④選挙立会人などです。
しかし、単に労務の提供をするだけのもの(たとえば、地域の消防訓練)は、公の職務に含まれないと考えられます。

3 院長は、従業員が労働時間中に、上記の公民としての権利や公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合には拒んではなりません。例外的に、権利の行使や公の職務の執行に支障とならない限度で時刻の変更が認められているに過ぎません(労働基準法7条)


次回も引続き「公民権行使の時間」について解説します。

2018年6月5日火曜日


74-20180605

今回は、「公民権行使の時間」についての条文を作ります。

第○条(公民権行使の時間)
1 選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務(裁判員を含む)を執行するために必要な時間は、従業員の請求によりこれを与える。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することがある。
2 前項の時間については有給とする。但し、公の職務の執行に対する日当等が支給される場合は、これに相当する額を控除することがある。

次回は、「公民権行使の時間」の条文の解説をします。