2016年10月26日水曜日


21-20161026



今回は、歯科医院の従業員の「休職」についての条文を作成します。



第〇条(休職)

1 正社員が次の各号のいずれかに該当するときは、所定の期間休職を命じることがある。


①業務外の傷病による欠勤が、継続、断続を問わず日常業務に支障をきたす程度(おおむね1か月程度)続くと認められるとき、若しくは休養が望ましい旨の医師の意見により療養を継続する必要があるため引続き欠勤するとき

欠勤初日から1年以内


②精神又は身体上の疾患により労務提供が不完全なとき、若しくは休養が望ましい旨の医師の意見により療養する必要があるため欠勤するとき

休職の辞令公布日から1年以内


③前2号のほか、特別な事情により休職させることが適当と認められるとき

医院が必要と認める期間



2 医院は、前項1号及び2号により休職中の従業員のために、社会保険(健康保険)の傷病手当金の申請を行う。



3 休職期間中の健康保険料、厚生年金保険料、住民税等であって、従業員の給与から通常控除するものについては、医院は従業員に対しあらかじめ請求書等を送付する。従業員は当該請求書等に記載された金額を指定期日までに医院に支払わなければならない。



4 休職期間は、勤続年数に算入しない。



5 休職期間中の給与は支給しない。



6 休職する従業員は、休職期間中主治医の診断に従い療養に専念するとともに、原則として毎月、療養の状況、休職の必要性等についてこれを証する診断書等を添えて医院に報告しなければならない。



7 前項及び次条第1項の診断書作成費用等は、医院による別段の指示がない限り、従業員本人の負担とする。


次回は、歯科医院の従業員の「休職」についての条文の解説をします。

2016年10月19日水曜日


20-20161019



今回は、歯科医院の従業員の「試用期間」に関する条文の解説をします。



(解説)

1 試用期間とは、正社員を採用するにあたって、採用後一定期間を「試用」の期間として、その間に当該正社員の人物や職務能力(例えば技術や接遇の能力)を評価して、本採用するかどうかを決定する制度です。裁判所は試用期間の法的性質について「解約権留保付労働契約」と解しています。したがって、試用期間中ないしは試用期間満了時の解雇や本採用拒否は、留保解約権の行使となり、この行使は「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合のみ許される」としています(三菱樹脂事件<最高裁大法廷判決昭和48.12.12>)。そのうえで、このような留保解約権に基づく解雇は通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められるべきであると判示しているので(上記最高裁判決)、歯科医院における試用期間中の従業員の本採用拒否は通常の解雇の場合よりも院長の有する労働契約解消の裁量範囲が広いものと考えてよいでしょう。



2 上述のように試用期間中の従業員の本採用拒否は、通常の解雇の場合よりも院長のもつ労働契約解消の裁量範囲が広いものと考えられるので、従業員にとっては不安定な地位におかれることになります。したがって、合理的な理由や必要性もなく長期にわたる試用期間を設けることは公序良俗違反として無効となり得ます(民法90条)。歯科医院の場合には、人物や職務能力(例えば技術や接遇の能力)を評価するために3か月程度が適当であると考えられますから、第1項で最長4か月間としました。



3 本条2項は、試用期間が本採用を決定するための期間であることと、その決定は「試用期間の途中又は満了日に行う」として、試用期間満了前の決定が可能であることを明確にしています。



4 試用期間を延長するためには、就業規則で延長事由等を規定し、かつ延長するための合理的な理由が必要とされています。合理的な理由がなければ、最初の試用期間満了と同時に本採用されたものとされるでしょう。延長期間も、実務上は、試用期間と延長期間を合算して1年を超えることは許されないと考えておいた方がいいでしょう(3項)。



5 本条4項は、試用期間を勤続年数に含めることを明確にしたものです。



次回は、歯科医院の従業員の「休職」についての条文を考えましょう。

2016年10月12日水曜日


19-20161003

今回は、歯科医院の従業員の「試用期間」についての条文を作成します。
 

第〇条(試用期間)

1 新たに採用した者については、採用の日から最長4ヶ月間を試用期間とする。

2 試用期間中の者について、健康状態、出勤状態、勤務状態及び職務能力等を総合的に判断して本採用の有無を決定する。この決定は試用期間の途中又は満了日に行う。

3 試用期間中の者の健康状態、出勤状態、勤務状態及び職務能力等を総合的に判断して、本採用の決定をすることが適当でないと判断したときは、試用期間を延長することがある。

4 試用期間は、これを勤続年数に算入する。

 
次回は、「試用期間」についての条文の解説をします。