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引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。
4 懲戒処分が有効と認められるためには、次の4つの要件が必要です。すなわち、①使用者が懲戒権を有すること、②従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当すること(懲戒事由該当性)、③行なった懲戒が懲戒処分の濫用と評価されないこと、④弁明の機会を与えるなど就業規則で定められた手続違反がないこと等です。
5 ①使用者が懲戒権を有するためには、懲戒処分の根拠となる就業規則規定(例:歯科衛生士が歯科医院の機密情報を漏洩した場合<懲戒事由>及びこれに対する懲戒処分<減給等懲戒処分の種別>)が当該処分時に制定されていることが必要であり、これが制定されていない場合、当該処分は根拠を欠くものとして無効になります。
②従業員の行為が就業規則の懲戒事由に該当すること(懲戒事由該当性)については、就業規則の文言だけで形式的に判断するのではなく、実質的に判断する必要があり、加えて、歯科医院の職場秩序を現実に侵害した(前例で言えば、機密を漏洩したことによって医院に損害が発生した)ことを要するとされています。
③行なった懲戒が懲戒処分の濫用と評価されないことについては、従業員の行為がたとえ懲戒事由に該当する場合でも、それに対する懲戒処分の相当性(行為と処分のバランス。前例で言えば、軽微な機密の漏洩に対して最も重い懲戒解雇に処するような場合)が問題とされ、それが否定されれば(バランスを失する場合は)懲戒権の濫用となります。
④弁明の機会を与えるなど就業規則で定められた手続違反がないことについては、就業規則で従業員に弁明の機会が与えられているにもかかわらず、その手続を経過せずに懲戒処分を行なった場合は、重大な手続違反とされ、懲戒権の濫用と評価されます。
次回も引続き「懲戒の種類及び程度」について解説します。