令和3年4月から36協定届の様式が変更されるので、歯科医院の場合についてその解説をします。
1 労働基準法36条は、法定労働時間を超えて労働させたり(時間外労働)、法定休日に労働させたりする(休日労働)ための必要な手続を定めています。したがって、本条所定の「書面による協定」は「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。その通常の届出様式は「様式第9号」として整備されています。令和3年4月から当該届出様式が変更され、36協定の適正な締結に向けて「労働者代表」についてのチェックボックスが新設されました。
2 36協定を締結する際に、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出し、その者を労働者側当事者とする必要があります。労働者とは、歯科医院の場合、当該医院に使用されている全ての従業員(歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士、歯科受付など)のことで、パートタイマーのような臨時労働者も含まれます(行政解釈)。
3 過半数代表者は従業員全員にかかわる重要な労使協定の内容について判断をしなければなりません。したがって、管理監督者(部長、課長、係長など労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者)に該当する可能性のある者は、過半数代表者として選出すべきではありません。歯科医院では、パートを含む全従業員のなかで院長と共に労務管理に携わっているような者(例えば、主任、事務長等)は、過半数代表者の選出に当たっては避けた方がいいと思われます。
4 過半数代表の選出手続は、投票、挙手など労働者の過半数がその人を過半数代表者とすることを支持していることが明確になるような民主的方法がとられていることが必要です。歯科医院では、院長が特定の従業員を指名することが少なからず行なわれているようですが、使用者の意向によって過半数代表者が選出された場合、その36協定は無効となります。そこで、歯科医院では、主任、事務長等を除く全従業員(パートを含む)で互選によって選出するようにお薦めしております。