2021年2月24日水曜日

 

令和3年4月から36協定届の様式が変更されるので、歯科医院の場合についてその解説をします。

1 労働基準法36条は、法定労働時間を超えて労働させたり(時間外労働)、法定休日に労働させたりする(休日労働)ための必要な手続を定めています。したがって、本条所定の「書面による協定」は「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。その通常の届出様式は「様式第9号」として整備されています。令和3年4月から当該届出様式が変更され、36協定の適正な締結に向けて「労働者代表」についてのチェックボックスが新設されました。

 

2 36協定を締結する際に、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出し、その者を労働者側当事者とする必要があります。労働者とは、歯科医院の場合、当該医院に使用されている全ての従業員(歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士、歯科受付など)のことで、パートタイマーのような臨時労働者も含まれます(行政解釈)。

 

3 過半数代表者は従業員全員にかかわる重要な労使協定の内容について判断をしなければなりません。したがって、管理監督者(部長、課長、係長など労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者)に該当する可能性のある者は、過半数代表者として選出すべきではありません。歯科医院では、パートを含む全従業員のなかで院長と共に労務管理に携わっているような者(例えば、主任、事務長等)は、過半数代表者の選出に当たっては避けた方がいいと思われます。

 

4 過半数代表の選出手続は、投票、挙手など労働者の過半数がその人を過半数代表者とすることを支持していることが明確になるような民主的方法がとられていることが必要です。歯科医院では、院長が特定の従業員を指名することが少なからず行なわれているようですが、使用者の意向によって過半数代表者が選出された場合、その36協定は無効となります。そこで、歯科医院では、主任、事務長等を除く全従業員(パートを含む)で互選によって選出するようにお薦めしております。

 

138-20210224

 

今回は、「軽易業務への転換」に関する条文を作成します。

 

第〇条(軽易業務への転換)

1 医院は、妊娠中の女性従業員が請求した場合には、他の軽易な業務に転換することとする。但し、軽易な業務が存在する場合に限る。

2 前項により業務を転換したときは、転換後の業務に応じて賃金を変更する場合がある。

 

次回は、「軽易業務への転換」について解説をします。

2021年2月17日水曜日

 

 

137-20210216

 

今回も引続き「産前・産後休業」について解説します。

 

(解説)

4 労働基準法65条1項の産前休業は、女性労働者の請求を要件として付与されます。この就業規則の第1項も「女性従業員から請求があったときは」と規定していますから、6週間以内に出産する予定の女性従業員から請求がない場合は就業させてもいいことになります。しかし、歯科医院の女性従業員の業務、特に歯科衛生士の業務は終日立って行なう作業が多いので、妊婦にとっては身体的な負担が大きいといえます。ですから、院長は、当該女性従業員から請求がない場合でも、念のため、母性保護及び労務管理の観点から、産前休業の請求をするかどうかの確認をすることが必要になると思われます。

 

5 労働基準法65条2項の産後休業のうち最初の6週間は強制的な休業ですが、6週間を経過した後は、女性従業員が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えないとされています。出産後の妊婦及び新生児の健康状態については個人差が大きいため、この就業規則の第2項で「医師が支障なしと認めた業務に就かせることができる」ことにしました。

 

6 労働基準法65条は、産前産後期間中の賃金保障について規定していないので、この期間中に賃金を支給するかどうかは就業規則に委ねられています。この就業規則の第3項は、産前産後休業期間中の賃金について無給であるとしました。しかし、産前産後休業期間に収入がなくなることは、従業員の生活に著しい支障をきたすことになります。ですから、歯科医院では、①健康保険法の出産手当金や、②雇用保険法の育児休業給付金を申請できるように、社会保険及び雇用保険の制度を整えておく必要があります。

 

次回は「軽易業務への転換」についての条文を作ります。

2021年2月10日水曜日

 

136-20210210

 

今回は「産前・産後休業」について解説します。

 (解説)

1 「出産」とは、妊娠4か月(1か月を28日として、4か月目の初日から計算開始するため、85日<28×31>)以上の分娩を意味します。これに該当すれば早産、流産、死産の場合も「出産」となりますから、いずれの場合も産前・産後休業の対象になります。

 2 産前6週間、産後8週間の計算は間違いやすいので注意が必要です。産前6週間は分娩予定日を基準として計算し、産後8週間は実際の分娩日の翌日から起算します(民法140条)。たとえば、歯科医院の従業員Aさんの分娩予定日が10月13日、実際の分娩日が10月18日であったとします。前述の計算方法によれば、産前休業は9月2日から10月13日まで(42日間)、産後休業は10月19日から12月13日まで(56日間)となります。ちなみに、出産日当日は産前6週間に含まれるとされているので(行政通達)、10月14日から10月18日までの5日間も産前休業になります。

 3 労働基準法は、「使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」(65条1項)、「使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。」(65条2項)と規定しています。休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項とされているので(労働基準法89条1号)、この就業規則の1項及び2項は、前述の労働基準法65条に基づいて、女性従業員に産前休業及び産後休業を与えることを規定したものです。

 次回も引続き「産前・産後休業」の解説をします。

2021年2月3日水曜日

 

135-20210203

今回は、「産前・産後休業」についての条文を作成します。

第〇条(産前・産後休業)

1 医院は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性従業員から請求があったときは、産前休業を与える。

2 産後8週間を経過しない女性従業員は就業させない。但し、産後6週間を経過した女性従業員が請求した場合においては、その者について医師が支障なしと認めた業務に就かせることができる。

3 前2項の休業期間については、無給とする。

次回は、「産前・産後休業」についての条文の解説をします。