2017年11月27日月曜日

56-20171127
今回は、前回に引き続き、従業員が請求した有給休暇を、院長が時季変更権を行使して変更したにもかかわらず欠勤した場合について解説をします。

(解説)
4 従業員から有給休暇の請求があったときに、従業員の請求どおりに有給休暇を与えることが歯科医院の「事業の正常な運営を妨げる場合」には、他の時季(常識的に「日」や「期間」と考えてよいでしょう)に有給休暇を与えることができるとされています(労働基準法第39条5項)。これを使用者の「時季変更権」といいます。
歯科医院は、「アポイント制」を採っており、その日の診療件数とそれに必要なDH等の人員があらかじめ計画されていますから、突然に有給休暇を請求されると、医院の業務に支障が出ることになります。
しかし、一般的には、人員不足を理由に「時季変更権」が認められることは難しいでしょう。院長は、代替勤務者を確保して勤務割を変更するなど、有給休暇を請求した従業員との利益を調整することに努力すべきでしょう。
判例では、通常の努力をすれば代替勤務者の確保が可能であったにもかかわらずその努力を怠った場合には、院長の時季変更権の行使は適法ではないとされています(弘前電報電話局事件・最高裁昭和62年判決)。

5 代替勤務者の確保が困難なため、従業員が年次有給休暇を取得すると直ちに必要な人員数を下回るというような合であっても、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するとは認められないとする判例があります(西日本JRバス事件・名古屋高裁平成10年判決)。

6 実務上、歯科医院では、従業員同志で話し合って、請求どおりに有給休暇が取れるように、“おたがいさま”の精神でうまく運用しているようです。


次回は、「労働時間及び休憩時間」に関する条文を作成します。

2017年11月15日水曜日

55-20171115

今回は、歯科医院の従業員の「無断欠勤」についての解説をします。

(解説)
1 従業員が自己の都合で欠勤するときは、事前に申し出て院長の承認を得なければなりません。この手続きを経ないで欠勤したときは、医院がやむを得ないと認めた場合を除き、無断欠勤としました。ただし、事前に承認が得られない事情があって、事後すみやかに理由・状況等を届け出て院長の承認を得たときは、無断欠勤とはならないと考えます。

2 医院が、私傷病を理由に欠勤する従業員に対して医師の診断書の提出を求めたにもかかわらず、これを提出せずに欠勤したときは、医院がやむを得ないと認めた場合を除き、無断欠勤としました。

3 たとえ、欠勤を事前に申し出て院長の承認を得た場合であっても、それが虚偽の理由による欠勤であったときは、無断欠勤としました。



次回は、院長が時季変更権を行使して変更をしたにもかかわらず欠勤した場合について解説します。

2017年11月8日水曜日

54-20171108

今回は、歯科医院の従業員の「無断欠勤」に関する条文を作成します。

第〇条(無断欠勤)
1 次の各号の場合には無断欠勤とする。但し、医院がやむを得ないと認めた場合はこの限りではない。
  第○条の手続きを経ないで欠勤したとき
  前条第○項の診断書を提出せずに欠勤したとき
  虚偽の理由で欠勤したとき
  年次有給休暇の請求に対して時季変更権の行使による変更をしたにもかかわらず欠勤したとき
2 前項により無断欠勤となった場合には、年次有給休暇への振り替えは認めない。但し、本人からの請求に基づき医院が承認した場合はこの限りではない。


次回は、歯科医院の従業員の「無断欠勤」についての条文の解説をいたします。

2017年11月1日水曜日

53-20171101

今回は、歯科医院の従業員の「私傷病欠勤と医師の診断」についての解説をします。

(解説)
1 従業員は、使用者(院長)との労働契約に基づいて労務提供義務を負っています。「欠勤」は労務提供義務の全部不履行であり、欠勤の理由を明らかにする責任は従業員の側にあります。また、経営者(院長)は、労務管理上、従業員の健康状態を把握しておく必要があります。

2 歯科医院は、「アポイント制」を採っており、その日の診療件数とそれに必要なDH等の人員があらかじめ計画されています。したがって、欠勤者がでると他の従業員に負担がかかるだけでなく、患者さんにも迷惑をかけることとなり、ひいては顧客満足度が低下することになります。ですから、いわゆる「仮病」を使って労務提供義務を免れようとする従業員に対しては、医師の診断を求めることは心理的にも有効な対処方法です。

3 従業員の主治医が作成する診断書に「自宅療養を要す」等と記載されていても、その診断書だけで従業員の健康状態を判断するのは労務管理上適切ではありません。したがって、主治医と面談して診断書の内容について確認することが必要です。この場合、従業員は主治医との面談が実現するように協力すべきことを規定しました。

4 主治医との面談に加えて必要があれば、医院の指定する医師の受診を求めることができる旨を規定しておいたほうがいいでしょう。


次回は、歯科医院の従業員の「無断欠勤」についての規定を作ります。