44-20170726
前回に引き続き「パワー・ハラスメントの禁止」に関する条文の解説をします。
(解説)
1 職場のパワー・ハラスメントを放置すると、従業員が仕事に対する意欲や自信を失い、心身の健康を害して休職を余儀なくされ、うつ病にかかるなどの危険があります。場合によっては、うつ病等の精神障害が労災に該当し、更に医院の安全配慮義務違反が認定されると、医院(経営者)が損害賠償責任を負うことになります(北本病院事件<さいたま地方裁判所 平成16年>)。
2 職場のパワー・ハラスメントをなくすために、①院長は、パワー・ハラスメントが医院の活力を削ぎ、結果として顧客満足度を低下させるものであることを意識し、自ら範を示してパワー・ハラスメントが発生しない組織文化を育てる努力をしなければなりません。歯科衛生士からは、患者さんの面前で院長から指導・教育の範囲を超えて注意をされたことに対する苦情が多いようです。院長のこのような行為は、直接被害にあわない従業員に対してもその士気を低下させ、結果として優秀な従業員が離職する原因ともなります。②職場の上司は、自らがパワー・ハラスメントをしないことは勿論、部下にもさせないように職場を管理しなければなりません。但し、上司には、職場をまとめ、人材を育成する役割があるので、必要な教育・指導を適正に行うことをためらってはなりません。③従業員の間では、些細なことで反目しあい、いじめにつながることがあります。普段から、良好なコミュニケーションを育て、お互いに理解し協力し合う努力をすることが必要です。なお、パワー・ハラスメントの防止対策に関しては、社会保険労務士の知識・経験を活用することをお勧めします。
次回は、歯科医院におけるパワー・ハラスメントの具体例を紹介します。