2017年7月26日水曜日

44-20170726

前回に引き続き「パワー・ハラスメントの禁止」に関する条文の解説をします。

(解説)
1 職場のパワー・ハラスメントを放置すると、従業員が仕事に対する意欲や自信を失い、心身の健康を害して休職を余儀なくされ、うつ病にかかるなどの危険があります。場合によっては、うつ病等の精神障害が労災に該当し、更に医院の安全配慮義務違反が認定されると、医院(経営者)が損害賠償責任を負うことになります(北本病院事件<さいたま地方裁判所 平成16年>)。

2 職場のパワー・ハラスメントをなくすために、①院長は、パワー・ハラスメントが医院の活力を削ぎ、結果として顧客満足度を低下させるものであることを意識し、自ら範を示してパワー・ハラスメントが発生しない組織文化を育てる努力をしなければなりません。歯科衛生士からは、患者さんの面前で院長から指導・教育の範囲を超えて注意をされたことに対する苦情が多いようです。院長のこのような行為は、直接被害にあわない従業員に対してもその士気を低下させ、結果として優秀な従業員が離職する原因ともなります。②職場の上司は、自らがパワー・ハラスメントをしないことは勿論、部下にもさせないように職場を管理しなければなりません。但し、上司には、職場をまとめ、人材を育成する役割があるので、必要な教育・指導を適正に行うことをためらってはなりません。③従業員の間では、些細なことで反目しあい、いじめにつながることがあります。普段から、良好なコミュニケーションを育て、お互いに理解し協力し合う努力をすることが必要です。なお、パワー・ハラスメントの防止対策に関しては、社会保険労務士の知識・経験を活用することをお勧めします。


次回は、歯科医院におけるパワー・ハラスメントの具体例を紹介します。

2017年7月12日水曜日

43-20170712

今回は、「パワー・ハラスメントの禁止」に関する条文の解説をします。

(解説)
1 パワー・ハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」(平成24年3月15日、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議『職場のパワー・ハラスメントの予防・解決に向けた提言』)と定義されています。
①については、「業務の適正な範囲」に含まれないのは明らかです。②と③については、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられます。④⑤⑥については、適正な業務上の教育・指導・注意との線引きが容易でない場合がありますが、具体的な判断を行う場合には、そのような行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによって左右される部分もあるので、それぞれの職場でその範囲を明確にする取り組みを継続する必要があるでしょう。

2 歯科医院で日常的に行われている教育・指導・注意などの業務上の行為が、たとえ悪意がなくても業務の適正な範囲を超えるときは、時として相手を深く傷つけることになる場合があります。このような行為は「職場のパワー・ハラスメント」に当たるので、歯科医院の職場からなくしてゆくべきです。職場のパワー・ハラスメントは、院長・上司から部下に対するものばかりでなく、同僚の間でも、部下から上司に対しても行われます。このように、パワー・ハラスメントは、働く人の誰でもがその当事者になり得るということに注意する必要があります。

次回も引き続き、「パワー・ハラスメントの禁止」に関する条文の解説をします。