2017年4月26日水曜日

37-20170426

前回に引き続き「従業員の遵守事項」に関する条文の解説をします。
今回(第2回)は、「(1)就業する際の遵守事項」に関する解説です。

(解説)
1 就業する際の遵守事項とは、歯科医院の従業員の就業の仕方や職場のあり方に関する規律をいいます。本条では、①から⑱に規定しています。この中で、歯科医院に必要な規律として特に規定しておかなければならないのは、④、⑤、⑥,⑦、⑭だと思われます。

2 歯科医院は、患者さんの健康に係る仕事をしていますので、④仕事上の失敗を隠したり、事実と異なる報告をすれば、院長の治療行為に影響を与えることになります。その意味で重要な規定です。

3 従業員が、診察台や治療器具を用いて、従業員同士で治療行為を行う例が見受けられます。⑤院長の許可なく、他の従業員に自身の治療行為を行わせ、もしくは他の従業員の治療行為を行わないように、徹底しましょう。従業員の技術を向上させるために職場内訓練が必要な場合は、院長の指導の下で、あらかじめ作成した教育プログラムに基づいて訓練するようにしましょう。

4 歯科医院は、⑥治療が長引くなど、所定の時間に休憩がとれないことがままありますし、⑦休憩時間にも患者さんや取引先からの電話に対して応対しなければならない場合が少なくありません。このような場合は、時間外労働として賃金を支払わなければならないので、このような時間の把握がきちんとなされるように、あらかじめマニュアルを作成して労働時間を管理することが大切です。

5 ⑭職場の整理整頓、清潔の保全は、いうまでもなく医療機関である歯科医院にとって極めて重要です。しかし、細部にまで目が行き届いていない医院も少なからず見受けられます。これを解決するには、作業マニュアルを作成して、日々運用することが必要です。


次回も引き続き、「従業員の遵守事項」に関する条文の解説(第3回)をします。

2017年4月10日月曜日


36-20170410



今回は、「従業員の遵守事項」に関する条文の解説(第1回)をします。



(解説)

1 労働契約の当事者(院長と従業員)は、労働契約を遵守するとともに、信義誠実の原則に従って権利を行使し、義務を履行しなければなりません(労働契約法3条4項)。また、就業規則に合理的な内容の服務規律(従業員の遵守事項)が定められ、その就業規則が実質的に周知されている場合には、従業員はこれを遵守する義務を負います(労働契約法7条本文)。ところが、歯科医院の多くは就業規則もなく、院長と従業員との権利義務関係や従業員が遵守すべき服務規律も必ずしも明確ではありません。このため、問題が発生したときに、とかく院長の一方的でその場しのぎの場当たり的な対応や処理になりやすく、これが従業員の不平・不満の温床になり、患者さんに対するサービスの低下を招き、従業員が定着しない大きな要因になっています。



2 服務規律は、業種や業態により異なります。歯科医院には、歯科医院に必要な服務規律があります。また、歯科医院を取り巻く環境は常に変化しており、歯科医院の従業員が遵守すべき規律を定める服務規律も、時代の動向や患者さんのニーズの変化に対応した見直しが必要です。



次回も引き続き、「従業員の遵守事項」に関する条文の解説(第2回)をします。