2017年11月27日月曜日

56-20171127
今回は、前回に引き続き、従業員が請求した有給休暇を、院長が時季変更権を行使して変更したにもかかわらず欠勤した場合について解説をします。

(解説)
4 従業員から有給休暇の請求があったときに、従業員の請求どおりに有給休暇を与えることが歯科医院の「事業の正常な運営を妨げる場合」には、他の時季(常識的に「日」や「期間」と考えてよいでしょう)に有給休暇を与えることができるとされています(労働基準法第39条5項)。これを使用者の「時季変更権」といいます。
歯科医院は、「アポイント制」を採っており、その日の診療件数とそれに必要なDH等の人員があらかじめ計画されていますから、突然に有給休暇を請求されると、医院の業務に支障が出ることになります。
しかし、一般的には、人員不足を理由に「時季変更権」が認められることは難しいでしょう。院長は、代替勤務者を確保して勤務割を変更するなど、有給休暇を請求した従業員との利益を調整することに努力すべきでしょう。
判例では、通常の努力をすれば代替勤務者の確保が可能であったにもかかわらずその努力を怠った場合には、院長の時季変更権の行使は適法ではないとされています(弘前電報電話局事件・最高裁昭和62年判決)。

5 代替勤務者の確保が困難なため、従業員が年次有給休暇を取得すると直ちに必要な人員数を下回るというような合であっても、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するとは認められないとする判例があります(西日本JRバス事件・名古屋高裁平成10年判決)。

6 実務上、歯科医院では、従業員同志で話し合って、請求どおりに有給休暇が取れるように、“おたがいさま”の精神でうまく運用しているようです。


次回は、「労働時間及び休憩時間」に関する条文を作成します。

2017年11月15日水曜日

55-20171115

今回は、歯科医院の従業員の「無断欠勤」についての解説をします。

(解説)
1 従業員が自己の都合で欠勤するときは、事前に申し出て院長の承認を得なければなりません。この手続きを経ないで欠勤したときは、医院がやむを得ないと認めた場合を除き、無断欠勤としました。ただし、事前に承認が得られない事情があって、事後すみやかに理由・状況等を届け出て院長の承認を得たときは、無断欠勤とはならないと考えます。

2 医院が、私傷病を理由に欠勤する従業員に対して医師の診断書の提出を求めたにもかかわらず、これを提出せずに欠勤したときは、医院がやむを得ないと認めた場合を除き、無断欠勤としました。

3 たとえ、欠勤を事前に申し出て院長の承認を得た場合であっても、それが虚偽の理由による欠勤であったときは、無断欠勤としました。



次回は、院長が時季変更権を行使して変更をしたにもかかわらず欠勤した場合について解説します。

2017年11月8日水曜日

54-20171108

今回は、歯科医院の従業員の「無断欠勤」に関する条文を作成します。

第〇条(無断欠勤)
1 次の各号の場合には無断欠勤とする。但し、医院がやむを得ないと認めた場合はこの限りではない。
  第○条の手続きを経ないで欠勤したとき
  前条第○項の診断書を提出せずに欠勤したとき
  虚偽の理由で欠勤したとき
  年次有給休暇の請求に対して時季変更権の行使による変更をしたにもかかわらず欠勤したとき
2 前項により無断欠勤となった場合には、年次有給休暇への振り替えは認めない。但し、本人からの請求に基づき医院が承認した場合はこの限りではない。


次回は、歯科医院の従業員の「無断欠勤」についての条文の解説をいたします。

2017年11月1日水曜日

53-20171101

今回は、歯科医院の従業員の「私傷病欠勤と医師の診断」についての解説をします。

(解説)
1 従業員は、使用者(院長)との労働契約に基づいて労務提供義務を負っています。「欠勤」は労務提供義務の全部不履行であり、欠勤の理由を明らかにする責任は従業員の側にあります。また、経営者(院長)は、労務管理上、従業員の健康状態を把握しておく必要があります。

2 歯科医院は、「アポイント制」を採っており、その日の診療件数とそれに必要なDH等の人員があらかじめ計画されています。したがって、欠勤者がでると他の従業員に負担がかかるだけでなく、患者さんにも迷惑をかけることとなり、ひいては顧客満足度が低下することになります。ですから、いわゆる「仮病」を使って労務提供義務を免れようとする従業員に対しては、医師の診断を求めることは心理的にも有効な対処方法です。

3 従業員の主治医が作成する診断書に「自宅療養を要す」等と記載されていても、その診断書だけで従業員の健康状態を判断するのは労務管理上適切ではありません。したがって、主治医と面談して診断書の内容について確認することが必要です。この場合、従業員は主治医との面談が実現するように協力すべきことを規定しました。

4 主治医との面談に加えて必要があれば、医院の指定する医師の受診を求めることができる旨を規定しておいたほうがいいでしょう。


次回は、歯科医院の従業員の「無断欠勤」についての規定を作ります。

2017年10月25日水曜日

52-20171025

今回は、歯科医院の従業員の「私傷病欠勤と医師の診断」に関する条文を作成します。

第〇条(私傷病欠勤と医師の診断)
1 医院は、従業員が私傷病を理由に欠勤するときは、医師の診断書の提出を求めることがある。
2 前項の場合、医院が当該診断書を作成した医師に対する面談による事情聴取を求めた場合、従業員はその実現に協力しなければならない。
3 第1項の診断書が提出された場合であっても、必要があれば従業員に対して医院の指定する医師の診断を求めることがある。


次回は、歯科医院の従業員の「私傷病欠勤と医師の診断」についての条文の解説をします。

2017年10月18日水曜日

51-20171018

今回は、歯科医院の従業員の「欠勤・遅刻・早退・私用外出」についての解説をします。

(解説)
1 従業員は、使用者(院長)との労働契約に基づいて労務提供義務を負っています。「欠勤」は労務提供義務の全部不履行、「遅刻・早退・私用外出」はその一部不履行となります。

2 労務提供義務を免除するには、使用者(院長)の「承認」又は「許可」が必要です。従業員の「届出」だけで労務提供義務が消滅することはありません。ですから、「・・・に届け出なければならない」と定めている就業規則は、「承認制」又は「許可制」に変更すべきです(注:「有給休暇」は労働者の権利なので、「届出」で足ります)。

3 「欠勤」と「遅刻」については、やむを得ない事情により事前に「承認」を得ることが難しい場合がありますから、このような場合には例外的に事後承認を認めました。しかし、「早退・私用外出」は、必ず事前の「承認」を得るようにしましょう。



次回は、歯科医院の従業員の「私傷病欠勤と医師の診断」についての規定を作ります。

2017年10月5日木曜日

50-20171005

今回は、歯科医院の従業員の「欠勤・遅刻・早退・私用外出」に関する条文を作成します。

第〇条(欠勤・遅刻・早退・私用外出)
1 従業員が自己の都合で欠勤、遅刻、早退、又は勤務時間中に私用外出するときは、事前に申し出て院長の承認を得なければならない。
2 欠勤、遅刻に限り事前に承認が得られない事情があるときは、事後すみやかに院長に理由・状況等を届け出て、その承認を得なければならない。


次回は、歯科医院の従業員の「欠勤・遅刻・早退・私用外出」についての条文の解説をします。

2017年9月29日金曜日

49-20170929
今回は、歯科医院の従業員の「出退勤」についての解説をします。

(解説)
1 労働基準法上の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。」(三菱重工長崎造船所事件・最高裁平成12年判決)とされています。

2 歯科医院では、指定された制服や作業服に着替える時間、朝礼に要する時間、清掃や治療器具を準備する時間、後片付けの時間、終業後の私服に着替える時間なども使用者の指揮命令下に置かれていると考えられるので、労働時間に含まれます。したがって、これらを全部合計した実労働時間が8時間を超える部分については、割増賃金を支払う必要があります。

3 所定の服装に着替えた後及び業務終了後直ちにタイムカードを打刻するようにした場合、所定の服装に着替える時間及び終業後の私服に着替える時間を労働時間に算入する必要があります。着替える時間には個人差があるので、従業員とよく話し合って、合理的な時間を設定しましょう。

4 私は、上記3の合理的な時間に相当する時間を、通常の休憩時間のほかに交代休憩(名称及び具体的な時間は医院の状況を考慮して就業規則で定めます)として与え、かつ、この時間を実労働時間として取扱うようにお薦めしています。このようにすれば、所定の服装に着替える時間及び終業後の私服に着替える時間を労働時間に算入することになるだけでなく、トイレの時間を確保し(繁忙時にはトイレに行けないという苦情が結構多い)、立ち仕事からくる疲労や集中力の低下を回避することができるメリットがあります。


次回は、歯科医院の従業員の「欠勤、遅刻、早退、私用外出」についての規定を作ります。

2017年9月6日水曜日

48-20170906

今回は、歯科医院の従業員の「出退勤」に関する条文を作成します。

第〇条(出退勤)
従業員は、出勤及び退勤について次の事項を守らなければならない。
  始業時刻前に医院に到着し、始業時刻とともに業務を開始すること
  所定の服装に着替えた後及び業務終了後直ちにタイムカードを打刻すること
  終業時刻後は、時間外労働の業務命令がない限りすみやかに退勤すること
  タイムカードの不正打刻、始業・終業時刻の不正記録や不正申告は、厳にこれを禁止する


次回は、歯科医院の従業員の「出退勤」についての条文の解説をします。

2017年8月30日水曜日

47-20170830

今回は、歯科医院における「機密情報管理に関する遵守事項」についての解説をします。

(解説)
1 歯科医院の従業員は、労働契約によって、広く医院の経営に影響を与える可能性のある情報(機密情報)を保持する義務を負っています。このような情報は、労働契約の存続期間中だけでなく、退職後も保持されなければ、医院の経営に支障をきたすことになります。そこで、本条1号で、在職中だけでなく退職後も機密情報の漏洩又は私的利用を禁止しました。しかし、本状2号で、業務上必要がある場合は事前に院長の許可を得てコピーやメール送信などができるようにしました。

2 個人情報保護法(平成1741日全面施行)は、事業主の義務を定めるものであって、従業員の義務を定める法律ではありませんが、従業員に対しても個人情報を保持する自覚を持たせるために「個人情報取扱規程」を設ける必要があるでしょう。なお、従業員の採用時、異動時、退職時等に機密保持のための「誓約書」をとっておいた方がいいでしょう。「個人情報取扱規程」や「誓約書」については、社会保険労務士にご相談ください。


次回は、歯科医院における「出退勤」についての規定を作ります。

2017年8月23日水曜日

46-20170823

今回は、歯科医院における「機密情報管理に関する遵守事項」についての条文を作成します。

第〇条(機密情報管理に関する遵守事項)
従業員は、重要な機密情報(経営・労務に関する情報、営業に関する情報、技術に関する情報及び患者さんに関する情報)の漏洩を防止するために、次の事項を遵守しなければならない。
  在職中又は退職後においても、知り得た機密情報を第三者に漏らし又は私的に利用してはならない。
  機密情報を院長の許可なくコピ-・複製・撮影し、他のパソコン(スマートフォン等を含む)やネットワークにデータ送信し、又はこれを院外に持ち出してはならない。但し、業務上の必要があり、かつ院長が事前に許可し、医院が指定した適切な管理方法による場合はこの限りではない。


次回は、職場における「機密情報管理に関する遵守事項」についての条文の解説をします。

2017年8月16日水曜日

44-20170816

今回は、歯科医院におけるパワー・ハラスメントの具体例を紹介します。

(解説)
1 歯科医院で実際にどのようなパワハラが行われているのか、調査したことがあります。その結果、歯科医院の従業員は、院長からのパワハラに悩んでいることがわかります。患者さんの前で怒鳴る、不必要な大声やふさわしくない言葉で注意する、○○さんと同じことをやれといわれる(過大な要求をする)などです。これらの行為は、たとえ教育・指導の目的で行われても、従業員の目には、適切な方法を知らない、短絡的な行動であると映ります。従業員同士のパワハラもあります。交代休日や有給休暇が自分に不利に調整されたこと、医院で行われた誕生会のお菓子が自分のために取り置きされなかったことなど、些細なことで従業員同士反目したり、いじめたりするなどの例がありました。

2 職場からパワハラをなくするためには、職場の一人ひとりが、自分も相手も等しく不当に傷つけられてはならない人としての尊厳をもった存在であることを認識したうえで、それぞれの価値観、立場、能力の違いなどをお互いに認めあって、その人格を尊重し合うことが必要です。


次回は、歯科医院の「機密情報管理に関する遵守事項」についての規定を作ります。

2017年7月26日水曜日

44-20170726

前回に引き続き「パワー・ハラスメントの禁止」に関する条文の解説をします。

(解説)
1 職場のパワー・ハラスメントを放置すると、従業員が仕事に対する意欲や自信を失い、心身の健康を害して休職を余儀なくされ、うつ病にかかるなどの危険があります。場合によっては、うつ病等の精神障害が労災に該当し、更に医院の安全配慮義務違反が認定されると、医院(経営者)が損害賠償責任を負うことになります(北本病院事件<さいたま地方裁判所 平成16年>)。

2 職場のパワー・ハラスメントをなくすために、①院長は、パワー・ハラスメントが医院の活力を削ぎ、結果として顧客満足度を低下させるものであることを意識し、自ら範を示してパワー・ハラスメントが発生しない組織文化を育てる努力をしなければなりません。歯科衛生士からは、患者さんの面前で院長から指導・教育の範囲を超えて注意をされたことに対する苦情が多いようです。院長のこのような行為は、直接被害にあわない従業員に対してもその士気を低下させ、結果として優秀な従業員が離職する原因ともなります。②職場の上司は、自らがパワー・ハラスメントをしないことは勿論、部下にもさせないように職場を管理しなければなりません。但し、上司には、職場をまとめ、人材を育成する役割があるので、必要な教育・指導を適正に行うことをためらってはなりません。③従業員の間では、些細なことで反目しあい、いじめにつながることがあります。普段から、良好なコミュニケーションを育て、お互いに理解し協力し合う努力をすることが必要です。なお、パワー・ハラスメントの防止対策に関しては、社会保険労務士の知識・経験を活用することをお勧めします。


次回は、歯科医院におけるパワー・ハラスメントの具体例を紹介します。

2017年7月12日水曜日

43-20170712

今回は、「パワー・ハラスメントの禁止」に関する条文の解説をします。

(解説)
1 パワー・ハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」(平成24年3月15日、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議『職場のパワー・ハラスメントの予防・解決に向けた提言』)と定義されています。
①については、「業務の適正な範囲」に含まれないのは明らかです。②と③については、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられます。④⑤⑥については、適正な業務上の教育・指導・注意との線引きが容易でない場合がありますが、具体的な判断を行う場合には、そのような行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによって左右される部分もあるので、それぞれの職場でその範囲を明確にする取り組みを継続する必要があるでしょう。

2 歯科医院で日常的に行われている教育・指導・注意などの業務上の行為が、たとえ悪意がなくても業務の適正な範囲を超えるときは、時として相手を深く傷つけることになる場合があります。このような行為は「職場のパワー・ハラスメント」に当たるので、歯科医院の職場からなくしてゆくべきです。職場のパワー・ハラスメントは、院長・上司から部下に対するものばかりでなく、同僚の間でも、部下から上司に対しても行われます。このように、パワー・ハラスメントは、働く人の誰でもがその当事者になり得るということに注意する必要があります。

次回も引き続き、「パワー・ハラスメントの禁止」に関する条文の解説をします。

2017年6月21日水曜日

42-20170621

今回は、歯科医院における「パワー・ハラスメントの禁止」についての条文を作成します。

第〇条(パワー・ハラスメントの禁止)
1 従業員は、たとえ教育・指導の目的であっても、他の従業員に対して次の各号の行為を行ってはならない。
①暴行・傷害(身体的な攻撃)
②脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④業務上明らかに不要なことや遂行不能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

2 医院は、パワー・ハラスメントの防止、相談・苦情の申出、苦情の処理・解決その他パワー・ハラスメントの防止対策を策定する。


次回は、職場における「パワー・ハラスメントの禁止」についての条文の解説をします。

2017年6月14日水曜日

41-20170614

今回は、「セクシャル・ハラスメントの禁止」に関する条文の解説をします。

(解説)
1 セクシャル・ハラスメントには、2つの類型があります(平成111011日厚生労働省告示615号)。①「対価型のセクシャル・ハラスメント」とは、従業員が、その意に反する性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことにより、解雇、降格、減給等の不利益を受けることです。②「環境型のセクシャル・ハラスメント」とは、従業員の意に反する性的な言動が行われることにより、職場環境が害され、その能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど従業員が就業するうえで看過できない程度の支障が生じることです。歯科医院においては、優秀な歯科衛生士等を確保し、その定着を図りつつ、能力を充分に活用する必要があります。このため、本条1項で、従業員の就業環境を破壊し、十分な能力の発揮を阻害するようなセクシャル・ハラスメントを禁止しました。

2 均等法11条によって、事業主には、セクシャル・ハラスメント防止の措置義務が課されています。このため、あらかじめ相談窓口を設けて、相談・苦情の申出を受けるなど適切に対処する必要があります。この防止対策に関しては、社会保険労務士の知識・経験を活用することをお勧めします。



次回は、「パワー・ハラスメントの禁止」に関する条文を作ります。

2017年6月7日水曜日

40-20170607

今回は、歯科医院における「セクシャル・ハラスメントの禁止」についての条文を作成します。

第〇条(セクシャル・ハラスメントの禁止)
1 従業員は次に掲げる性的な言動等(セクシャル・ハラスメント)を行ってはならない。
①身体への不必要な接触、性的な冗談、性的な噂の流布、性的なものを視覚に訴える行動、食事等の執拗な誘いなど相手方の望まない言動
②相手方及び他の従業員に不利益や不快感を与え、就業環境を害し、具体的な職務遂行を阻害し、又はそのおそれを発生させるような言動
③その他前各号に準ずる性的言動

2 医院は、セクシャル・ハラスメントの防止、相談・苦情の申出、苦情の処理・解決、プライバシーの保護その他セクシャル・ハラスメントの防止対策を策定する。


次回は、「セクシャル・ハラスメントの禁止」についての条文の解説をします。

2017年5月25日木曜日

39-20170525

前回に引き続き「従業員の遵守事項」に関する条文の解説をします。
今回(第4回)は、「(3)従業員としての地位・身分に伴う遵守事項」及び「(4)その他上記に準じる遵守事項」に関する解説です。

(解説)
1 ㉔、㉕、㉖、㉘、㉚、㉛は、歯科医院では常識的な遵守事項です。

2 ㉗は、兼業等を無制限に認めると職場での仕事がおろそかになる可能性があり、また長時間労働につながることから健康を損なう惧れがあるので、院長の許可がなければ兼業はできないとしました。

3 歯科医院の経営上の情報や、患者さん等の個人情報(マイナンバーを含む)が漏洩すれば、歯科医院の円滑な運営に支障をきたします。ですから、㉙で歯科医院の内外を問わず、また退職後においても秘密の漏洩を禁止しました。

4 歯科医院の従業員の遵守事項を①から㉛まで定めましたが、必要なすべての遵守事項をあらかじめ具体的に定めておくことは不可能です。そこで、㉜で、①から㉛に準じるような歯科医院の職場秩序違反を包括的に禁止しました。

5 歯科医院の経営環境は常に変化しており、そのときどきの状況に応じて服務規律を新設・変更することが必要になります。これが労働条件の不利益変更に当たるかどうかが問題になりますが、不利益変更には当たらないと考えていいでしょう。



次回は、「セクシャルハラスメントの禁止」に関する条文を作ります。

2017年5月10日水曜日

38-20170510

前回に引き続き「従業員の遵守事項」に関する条文の解説をします。
今回(第3回)は、「(2)医院の設備・器具・備品・情報等の管理・保全のための遵守事項」に関する解説です。

(解説)
1 ⑲、⑳、㉑は、相互に関連する事項です。設備・器具・備品等を管理・保全するためのポイントは、取扱マニュアルを作成し、これに基づいて、あらかじめ決められた担当者が補充・発注等を行うことです。院長は、定期的に担当者から管理・保全の状況を聴取するようにしましょう。医療廃棄物は、その種類ごとに法令で定められた適切な処理・処分方法を遵守しなければなりません。これも取扱マニュアルを作成し、これに基づいて、あらかじめ決められた担当者が行うようにしましょう。

2 歯科医院のスタッフ休憩室の管理が盲点になっています。ガスレンジ、ストーブなどの火気の使用や喫煙による火災を絶対に発生させてはなりません。火気責任者を選任して管理することが大切です。

3 ㉓は、情報の管理・保全のための規定です。特に患者さんのデータの流失は、歯科医院のイメージを著しく損なうので、医院の規模の大小にかかわらず個人情報保護法を遵守することが大切です。



次回も引き続き、「従業員の遵守事項」に関する条文の解説(第4回)をします。

2017年4月26日水曜日

37-20170426

前回に引き続き「従業員の遵守事項」に関する条文の解説をします。
今回(第2回)は、「(1)就業する際の遵守事項」に関する解説です。

(解説)
1 就業する際の遵守事項とは、歯科医院の従業員の就業の仕方や職場のあり方に関する規律をいいます。本条では、①から⑱に規定しています。この中で、歯科医院に必要な規律として特に規定しておかなければならないのは、④、⑤、⑥,⑦、⑭だと思われます。

2 歯科医院は、患者さんの健康に係る仕事をしていますので、④仕事上の失敗を隠したり、事実と異なる報告をすれば、院長の治療行為に影響を与えることになります。その意味で重要な規定です。

3 従業員が、診察台や治療器具を用いて、従業員同士で治療行為を行う例が見受けられます。⑤院長の許可なく、他の従業員に自身の治療行為を行わせ、もしくは他の従業員の治療行為を行わないように、徹底しましょう。従業員の技術を向上させるために職場内訓練が必要な場合は、院長の指導の下で、あらかじめ作成した教育プログラムに基づいて訓練するようにしましょう。

4 歯科医院は、⑥治療が長引くなど、所定の時間に休憩がとれないことがままありますし、⑦休憩時間にも患者さんや取引先からの電話に対して応対しなければならない場合が少なくありません。このような場合は、時間外労働として賃金を支払わなければならないので、このような時間の把握がきちんとなされるように、あらかじめマニュアルを作成して労働時間を管理することが大切です。

5 ⑭職場の整理整頓、清潔の保全は、いうまでもなく医療機関である歯科医院にとって極めて重要です。しかし、細部にまで目が行き届いていない医院も少なからず見受けられます。これを解決するには、作業マニュアルを作成して、日々運用することが必要です。


次回も引き続き、「従業員の遵守事項」に関する条文の解説(第3回)をします。

2017年4月10日月曜日


36-20170410



今回は、「従業員の遵守事項」に関する条文の解説(第1回)をします。



(解説)

1 労働契約の当事者(院長と従業員)は、労働契約を遵守するとともに、信義誠実の原則に従って権利を行使し、義務を履行しなければなりません(労働契約法3条4項)。また、就業規則に合理的な内容の服務規律(従業員の遵守事項)が定められ、その就業規則が実質的に周知されている場合には、従業員はこれを遵守する義務を負います(労働契約法7条本文)。ところが、歯科医院の多くは就業規則もなく、院長と従業員との権利義務関係や従業員が遵守すべき服務規律も必ずしも明確ではありません。このため、問題が発生したときに、とかく院長の一方的でその場しのぎの場当たり的な対応や処理になりやすく、これが従業員の不平・不満の温床になり、患者さんに対するサービスの低下を招き、従業員が定着しない大きな要因になっています。



2 服務規律は、業種や業態により異なります。歯科医院には、歯科医院に必要な服務規律があります。また、歯科医院を取り巻く環境は常に変化しており、歯科医院の従業員が遵守すべき規律を定める服務規律も、時代の動向や患者さんのニーズの変化に対応した見直しが必要です。



次回も引き続き、「従業員の遵守事項」に関する条文の解説(第2回)をします。

2017年3月31日金曜日


35-20170331



今回は、歯科医院の「従業員の遵守事項」のうち、「従業員としての地位・身分に伴う遵守事項」等についての条文を作成します。



(3)従業員としての地位・身分に伴う遵守事項

㉔常に品位を保ち、医院の内外を問わず、従業員としての体面を傷つける行為をしてはならない。

㉕職務上の地位を利用して、自己又は他人の利益を図らないこと。職務に関して、直接又は間接に供応や贈与・贈答を受けてはならない。

㉖医院を中傷・誹謗し、その名誉又は信用を損なう行為をしないこと。他の従業員をゆえなく中傷・誹謗し、その名誉又は信用を損なう行為をしてはならない。

㉗院長の許可なく他の医院に雇用され、もしくは自ら営業を行ってはならない。

㉘公職に立候補又は就任する場合には、あらかじめその旨を医院に届け出なければならない。

㉙在職中又は退職後においても、患者、取引先その他の関係者及び従業員等の個人情報を正当な理由なく開示、漏えいし又は不正に入手してはならない。

㉚業務上必要な報告、届出を怠り、又は虚偽の報告、届出を行ってはならない。

㉛申告すべき事項及び届出事項に変更が生じたときは、すみやかにその申告及び届出をしなければならない。

(4)その他、上記に準ずる遵守事項

㉜その他、上記に準ずる事項により医院の秩序を乱し、またはそのおそれを発生させてはならない。



次回は、「従業員の遵守事項」についての解説をします。

2017年3月3日金曜日


34-20170303



今回は、歯科医院の「従業員の遵守事項」のうち、「医院の設備・器具・備品・情報等の管理・保全のための遵守事項」についての条文を作成します。



(2)医院の設備・器具・備品・情報等の管理・保全のための遵守事項

⑲医院の設備・器具・備品等を大切に取扱い、毀損しないこと。誤って毀損したときは、直ちに院長に届出ること。これらを業務外の目的に使用してはならず、また院長の許可なく院外に持ち出してはならない。

⑳治療に用いる器具・備品・薬品等は、あらかじめ決められたマニュアルに従って管理・保全し、補充・発注は、院長の許可を得て、定められた担当者がこれを行うこと。

㉑消耗品は、常に節約すること。

㉒所定の場所以外において喫煙してはならず、電熱器等の火気を院長の許可なく用いてはならない。

㉓職務上知り得た医院・患者・取引先等の秘密ならびに医院に不利益となる事項を、在職中及び退職後も外部に漏らしてはならない。



次回は、「従業員の遵守事項」のうち、「従業員としての地位・身分に伴う遵守事項」について、条文を作成します。

2017年2月22日水曜日


33-20170222



今回は、歯科医院の「従業員の遵守事項」のうち、「就業する際の遵守事項」についての条文を作成します。



第〇条(従業員の遵守事項)

従業員は次の事項を守り、服務に精励しなければならない。



(1)就業する際の遵守事項

①正当な理由なく、欠勤・遅刻・早退をしてはならない。

②医院が定めた正規の服装、身だしなみで職務に従事しなければならない。名札は必ずつけること。

③院長や上司の指示・命令を守り、責任をもって業務を正確・迅速に行い、必要事項はその都度報告・連絡・相談すること。

④仕事上の失敗を隠し、又は事実と異なる報告をしてはならない。

⑤勤務時間の内外を問わず、院長の許可なく自身の治療行為を行わせ、もしくは他の従業員の治療行為を行ってはならない。職場内訓練は、あらかじめ作成された教育プログラムに基づいて行う以外はこれを行ってはならない。

⑥食事・休憩・喫煙は、医院が指定した場所で行い、時間を厳守すること。診療が長引いて所定の時間に休憩がとれない場合には、院長の許可を得て、他の時間に休憩をとること。

⑦休憩中における患者さんや取引先の電話対応は、あらかじめ決められたマニュアルにしたがって行わなければならない。

⑧就業中は業務に専念し、院長の許可なく就業の場所を離れ、又は業務外の行為をしてはならない。

⑨勤務時間中は、原則として私用外出することはできない。やむを得ない理由によって私用外出するときは、院長の許可を得なければならない。

⑩職場内で喧噪その他秩序・風紀を乱す行為をしてはならない。

⑪職場内では、許可なく集会・演説・宣伝行為をし、業務外の文書・図書の回覧、配布、掲示をしてはならない。

⑫酒気を帯びて就業するなど、従業員としてふさわしくない行為をしてはならない。

⑬他の従業員の業務や休憩中を妨害する行為をしてはならない。

⑭職場は常に整理整頓し、常に清潔を保たなければならない。

⑮就業中は医院のコンピュータや自分の携帯電話等を用いてウエブサイトの閲覧、メールなど私的な行為を行ってはならない。

⑯医院に対する報告・連絡・申請等に関して、所定の文書を用いて行うべきことが定められているときは、緊急な場合を除いてこれに従わなければならない。

⑰従業員は、勤務の延長としての性格を有する医院の行事(誕生日会、新年会等)に参加しなければならない。

⑱その他前各号に準ずる従業員としてふさわしくない行為をしてはならない。



次回は、「従業員の遵守事項」のうち、「医院の設備・器具・備品等の管理・保全のための遵守事項」について、条文を作成します。

2017年2月6日月曜日


32-20170206



今回は、服務の原則に関する条文の解説をします。



(解説)

1 歯科医院は、歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士、歯科受付等の職務に従事する従業員によって構成され、歯科医師を中心に互いに協力してチーム医療を行っています。このような従業員を組織的に活用して、質の高い歯科医療サービスを提供するためには、職場に一定の規律が必要になります。



2 就業規則に合理的な内容の職場規律が定められ、その就業規則が実質的に周知されている場合には、従業員はこれを遵守する義務を負います(労働契約法7条本文)。

労働契約法7条  労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする(但書は省略)



3 本条は、医院の方針、諸規則及び指示命令の遵守、職場の秩序の維持、誠実な労務の提供等の従業員の義務を一般原則として定めたものです。



次回は、歯科医院の従業員の「服務規律」を作成します。

2017年1月30日月曜日


31-20170130



今回は、歯科医院の従業員の「服務の原則」についての条文を作成します。



第〇条(服務の原則)

従業員は、医院の方針、諸規則及び指示命令を守り、職務上の責任を自覚し、互いに人格を尊重しつつ、誠実に職務を遂行し、患者満足の向上に努めるとともに、職場の秩序の維持及び医院の信用の保全に努めなければならない。



次回は、「服務の原則」についての条文の解説をします。

2017年1月23日月曜日


30-20170123



今回は、歯科の従業員の復職の取消について、条文の解説をします。



(解説)

1 第1項は、休職の繰り返しを防止する規定です。近年、うつ病等の精神疾患が増えています。その特色は、身体疾患(怪我、精神疾患以外の病気など)と異なり、なかなか治癒することが難しく、復職しても再発を繰り返す傾向があることです。復職後、再び通常の労務の提供ができなくなるまで、どの程度の期間を置くのが適切かについては問題になるところですが、歯科医院の場合にはこれを6か月としました。



2 第2項では、復職が取り消された場合に、復職前の休職期間の残期間があればその期間について再び休職することができるようにしました。残期間がなくなった時点で自然退職になります。復職前の休職で、すでに定められた休職期間を使い切っている場合は、その後の休職規程の適用はなく、自然退職になります。



3 第1項及び第2項の場合に、普通解雇できる余地を残しておきました。但し、解雇の場合には、客観的に合理的な理由と社会的相当性が必要となることに注意が必要です。



次回は、歯科医院の従業員の「服務規律」に関する条文を作成します。

2017年1月10日火曜日


29-20170110



今回は、歯科医院の従業員の「復職の取消」についての条文を作成します。



第〇条(復職の取消)

1 従業員が復職後6か月以内に、同一若しくは類似の事由により、通常の労務の提供をできない状態になったときは、復職を取り消し直ちに休職させる。



2 前項の場合の休職期間は、復職前の休職期間の残期間とする。但し、残期間が3か月未満の場合は、これを3か月とする。



3 前2項の規定は、傷病を理由とする普通解雇規定の適用を妨げない。


次回は、歯科医院の従業員の「復職の取消」に関する解説をします。